『あいの里』はなぜ“大人の恋リア”として支持される? 華やかなデートなし、老眼、病気、下ネタまで……生々しさが生む面白さ

何歳になっても不器用な“大人の恋”

 生々しいのは、会話だけではない。恋をする姿もまた、驚くほど不器用だ。

 シーズン1のアンチョビは、女性の何気ない言動から「自分に気があるのでは」と期待し、恋の矢印を盛大に読み違えていく。シーズン2のギタりんは、好きになれば気持ちが先走り、相手との距離感を見失って空回り。一方、あやかんは体型へのコンプレックスから自分に自信が持てず、恋愛でも他人と自分を比べては傷ついてしまう。

 勘違いしたり、突っ走ったり、臆病になったり。社会では何十年も“大人”として生きてきた人たちが、恋をした途端、驚くほど不器用になる。その姿に思わず笑ってしまうことも多い。

「あいの里」ダイジェスト映像 - Netflix

 けれど、番組は彼らを単なる“イタい大人”として切り捨てない。共同生活を見つめているうちに、その人がなぜ恋愛に臆病なのか、なぜ相手との距離をうまく測れないのか。その背景にある過去やコンプレックスまでが少しずつ見えてくる。最初は笑って見ていた相手に、いつの間にか感情移入している。それも『あいの里』ならではの面白さだ。

 何歳になっても、恋をすれば子どものように舞い上がる。ところが、大人の恋は子どものように「好き」という気持ちだけでは進めない。

 シーズン1のたあ坊とゆうこりんは、互いに惹かれ合いながらも、結婚後の家族との付き合い方などをめぐって衝突した。シーズン2でも、結婚して子どもを持つことを望むちぃと、2度の離婚を経験し、すでに子どもがいるあきぽんの間には、将来をめぐる考え方の違いがあった。

 年齢を重ねるほど、一人の人間の後ろには家族や子ども、結婚歴、仕事、すでに築いてきた生活がある。恋する気持ちはいくつになっても変わらないが、「この人が好き」だけでは決められない。恋愛を通して、その人の“これまで”だけでなく、“これからどう生きたいのか”まで浮かび上がってくる。

ドラマを生む独自の告白システム

 そして、『あいの里』をよりドラマチックにしているのが、独自の告白システムだ。恋リアでは、共同生活の最終日に思いを伝え合う形式や、『バチェラー・ジャパン』のように回を追うごとに参加者が絞られていく形式も多い。一方、『あいの里』には全員共通の“告白の日”がない。好きな人ができたら、共同生活の途中であっても丘の上にある「あいの鐘」を鳴らし、自分のタイミングで思いを伝えることができる。

 ただし、そのチャンスは一度きり。翌日、相手が告白を受け入れれば二人で里を去るが、断られれば告白した側だけがその場で脱落する。このルールもまた、好きな人ができたら日本へのチケットを渡して告白し、振られれば一人で帰国する『あいのり』から受け継がれたものだ。

 つまり『あいの里』では、最終回まで残ることがゴールではない。本人が決断した瞬間が、その人にとっての最終回になる。

 いつ告白するのかを自分で決められる代わりに、鐘を鳴らした瞬間、もう後戻りはできない。ただでさえ勇気のいるルールだが、人生経験を重ねた『あいの里』の参加者にとって、その決断はより重く映る。

 何十年も生きていれば、失恋だけでなく、離婚や死別、人間関係の挫折など、すでにさまざまな痛みを経験している。傷つくことがどんなものかを知っている人たちが、それでも「この人とこの先を生きたい」と思い、もう一度傷つくかもしれない場所へ自ら踏み出す。

中さんの鐘鳴らし🔔 | あいの里 | Netflix Japan

 その象徴ともいえるのが、シーズン1の中さんとみな姉だろう。

 妻との死別を経験した60歳の中さんは、同い年のみな姉に恋をした。そして告白を決意すると、丘の上にある「あいの鐘」を、これでもかというほど一心不乱に鳴らした。

 そのあまりの勢いに、思わず笑ってしまった人も多いのではないか。けれど、中さんはもちろん大真面目だ。そして彼が歩んできた人生を知っているからこそ、笑っているうちに不思議と涙も込み上げてくる。一度大切な人を失った男性が、60歳でもう一度誰かを好きになり、「この人とこれからを生きたい」と願って鐘を鳴らしている。その姿には、人生の可笑しさと切なさが同居していた。

恋愛以上に“一人ひとりの人生”を映す『あいの里』

 『あいの里』には、こんな“泣き笑い”の瞬間が何度も訪れる。人は何歳になっても完成しない。恋をすれば舞い上がるし、勘違いもする。嫉妬もする。身体にガタもくるし、人生だって思い描いた通りにはいかない。それでも、くだらない話で笑い、また誰かを好きになる。

 だからこそ、同世代以上の視聴者は、彼らの姿に自分を重ね、「分かる」と頷けるのだろう。一方、若い視聴者にとっては、「こんな大人もいるんだ。いていいんだ」と思わせてくれる存在でもある。結婚してもしなくても、離婚しても、大切な人を失っても、人生は続いていく。そして、何歳からでもまた誰かを好きになれる。

 『あいの里』を観終わったあと、ほんの少しだけ心が軽くなるのは、きっとそのためだ。彼らを見ていると、未来が少しだけ怖くなくなる。

 『あいの里』は恋愛リアリティーショーだ。けれど、そこで描かれているのは、恋愛以上に一人ひとりの人生なのかもしれない。シーズン3では、果たしてどんな大人たちの人生を覗かせてもらえるのだろうか。

■配信情報
Netflixリアリティシリーズ『あいの里』シーズン3
配信日:10月6日(全23話/初回1~8話一挙配信)
配信プラットフォーム:Netflix(独占配信)
配信スケジュール:
・10月6日 第1話~第8話
・10月13日 第9話~第12話
・10月20日 第13話~第16話
・10月27日 第17話~第20話
・11月3日 第21話~第23話
スタジオMC:田村淳、ベッキー
ナレーション:神谷浩史
主題歌:「見つめていたい(Every Breath You Take)」/ポリス(The Police)
プロデュース・演出:西山仁紫
チーフプロデューサー:植竹克之
エグゼクティブ・プロデューサー:太田大(Netflix)
制作協力:エンネットワーク
製作:Netflix

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