医療崩壊を防ぐ救世主になる?  医師・医療ジャーナリストの森田豊氏が語る “身に着けるAIボイスレコーダー”『PLAUD NotePin』の実力

 ChatGPT-4oと連携した話題の高性能AIボイスレコーダー「PLAUD.AI」シリーズ第2弾となる『PLAUD NotePin』が10月23日に発売された。ミニマムなウェアラブルガジェットにして、録音した音声データから短時間で高精度な文字起こしから要約、マインドアップまで自動作成してくれる優れもの。

 今回はテレビやラジオなどで活躍し、12月6日公開の映画『劇場版 Doctor-X FINAL』の医療監修も担当した医師・医療ジャーナリストの森田豊氏に『PLAUD NotePin』の実力を体験してもらった。

医療崩壊を防ぐカギは「“医療免許なしでできること“はいっさい致しません」

ーーまずは『PLAUD NotePin』を使ってみた感想をお願いします。

森田:いや、正直、ビックリしましたね。精度の高さに。簡単なテストとして以前、テレビ番組に出演した際のビデオを『PLAUD NotePin』で録音して文字起こしをしてもらったのですが、僕が話した内容がしっかりと要約されていて、文字起こしも正確で。人がやると正確に文字起こしするのはそこそこ大変な作業なのにね。『PLAUD NotePin』があれば、医療界での悩みの種が激減すると感じました。もちろん、医療ジャーナリストとしての僕自身の活動にも役立ちそうですが、一般的に考えるとジャーナリストの仕事をしている人の数ってそう多くないじゃないですか。それよりも僕ら医師や看護師、あるいはその他の業界でも記録することを必要としている多くの人の現場でとても役立つのではないかなと思ったわけです。

ーー現役医師であると同時に医療ジャーナリストとして活動されている森田さんですが、12月に公開される映画『劇場版 Doctor-X FINAL』の医療監修もご担当されていますよね?

森田:ええ、”ドクターX”には2012年にドラマ版を立ち上げる際から、医療監修という立場で参加させていただいています。米倉涼子さんが演じる主人公の外科医・大門未知子の名言で「私、失敗しないので。」というのがありますが、実はもうひとつ名言がありまして。それが「医療免許なしでできることはいっさい致しません」。これこそが、今の医療界で大切なことなのではないかと私は考えるわけです。

ーー森田さんは10年以上前から医療崩壊の課題を提言されていますね。

森田:まさにそれです。医師が医師にしかできない仕事のみに集中することができれば、医療崩壊を防ぐことができるのではないかと考えています。例えば患者さんを診療する際に書くカルテ。現在では多くが電子カルテになっていますが、得てしてPCだけを見ていて患者さんを診ていない医師が多いのが実情です。

ーーそれは医師が悪いというよりは、記録する作業があるから仕方がないという面もありますよね?

森田:そこなんです。記録をとるという作業を『PLAUD NotePin』みたいなAIに任せることができれば、もっと患者さんの姿に目を向けることができますよね。15年くらい前にメディアで医療崩壊というワードが叫ばれはじめて、そのころから私は医療ジャーナリストとして声を上げてきて今日に至っているわけですが、現在でも外科医や当直のある産科医のなり手が少ないのが実情です。それは医師にかかる負荷が大きいから。コロナ禍でも是正はできず今後、どうやって解消していくかを考えると、医師の免許がなくてもできることはしない、に尽きると思うのです。その分、患者に集中することができるわけですから。『PLAUD NotePin』はいつでも正確な記録をとってくれるという点で、専属の医療秘書を置くような感覚ですよね。会話の内容の正確さはもちろんですが、その会話の骨子まで記してくれるじゃないですか。きちっとわかりやすくまとめてコンパクトに。この要約機能の精度には本当に驚きましたね。

ーー医療というと専門性の高いワードが頻繁に登場することになりますが、『PLAUD NotePin』の文字起こしの精度などで気になったことはありますか?

森田:たしかに、”森田”を”森戸”さんと文字起こしていたりとかはありましたけど、これは音声の録音環境もあるでしょうし、それに後から見れば、明らかな聞き取り間違いだなとわかりますしね。あと、”医局講座制”という専門用語なども使いましたけど、そもそも、この言葉を知らない人の方が多いわけで。それでも、”偏在化”というワードなどはきちんと文字起こししてくれていますしね。最終的には自分がチェックする訳ですし、実用レベルでは間違いがないという印象です。

ーー仮に医療現場に『PLAUD NotePin』を導入するとしたら、どんな課題と解決策がありますか?

森田:インフォームド・コンセントの問題でしょうね。まずは事前に患者さんへ録音することに断りをいれ、承諾を得ておかなくてはなりません。現在では患者さんの病状や治療について医師が説明する際に、例え0.01%でも合併症の可能性がある場合もきちっとカルテに記して患者さんに伝えますし、反対に患者さんからの質問や、それにどう答えたかなども記録します。

 また、インフォームド・コンセントの重要性が高まってくるのは、治療が始まった後に期待していた治療効果が得られなかったり、落ち着いていた病状が再び悪化した場合なんですよね。そこからの治療はオーダーメイドになっていきますから。診療の際に患者さんが話したことを診療後にカルテに記して残すわけですが、記録を書いたりPCで打ち込むにもそこそこ時間がかかるわけですよ。

ーーその作業を『PLAUD NotePin』に任せればいいわけですね?

森田:『PLAUD NotePin』が診療方針や内容を全部文字起こしして、さらに骨子をまとめてくれる。さらにより内容の詳細や正確性が必要なら、大元の音声データまで戻ればいいわけで。正確性の高い記録がとれて、しかも医師の負担なく記録に残せるという点で、患者さんと医師の双方にとってメリットのある質の高い医療につながっていくはずです。

 録音することを嫌がる患者さんもいらっしゃいますが、トラブルがあったときに出すという方向性ではなくて、後で振り返ったときに医療の透明性につながるという考え方ですね。大事なのは同じ考えを共有していれば、患者さんと医師の信頼関係は揺らがなく、双方にとってもより良いことにつながると思います。

ーー『PLAUD NotePin』を使えば30分話した内容でも、ものの5分もかからずにデータ化できますしね。

森田:そうそう、すぐにプリントアウトもできますよね。病院だけではなく、介護施設などでも有用だと思いますね。例えば介護認定の記録を残さなければならないときとか。医療は透明性が担保されていないとトラブルの原因になるんですよ。ある意味、医療も契約。だからこそ、しっかりと正確な記録は残していかなければならないわけなんです。

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