『ポリティカルパン』が仕掛ける“政治×怪盗”の面白さ 野木亜紀子らしい鮮やかな“入口”
政治の金を奪うには、まずその内側に忍び込まなければならない。弥生がその突破口を探る過程が、私たち視聴者にとって政治に近づくプロセスそのものになっていく。そして、次々に「ん?」という違和感も見えてくる。
例えば、出馬に関して。本来広く開かれているはずの政治家への道。だが、実際に出馬しようとすると、「地盤=組織力」「看板=知名度」「カバン=資金力」がなければ、まったく太刀打ちができない。とくに、資金があればあるほど人や情報を動かすことができる。みんなのものであるはずの政治は、その入口から「お金」ありきの仕組みになっているのだ。
でも、それを変えることができるのは、その仕組みから勝ち上がった人たちだけというもどかしさ。自分にとって有利に働いているものをわざわざ変えようとする人は、そうそういない。むしろ、子に、孫にと世代交代をしてもなお、自分たちの地位を固めるべく仕組みを整えていく。だから、必要なのだ。その盤石な守りをするりとかわし、懐に手を突っ込んでいく怪盗が。
「政治のお金」という形をしているけれど、そこにあるのは「夢を語れる国」そのものなのかもしれない。自分が望む未来を語って笑われない国。そんな弥生の思いに共鳴する形で、政治家の娘・小早川雅(河合優実)もまた、奪われてきた「自分」を取り戻すべく立ち上がる。そんな弥生によって突き動かされているのは、情報屋・乾(渡部篤郎)も同じだ。彼も、その心のうちには果たしたい大きな目的がある様子。自分の目的のために、お互いを利用する。でも、それが結果的に誰かのためにもなっているということ。自己犠牲をして貧しい人を救うのではなく、個人の幸福を積み上げた先に国があるのだと示すのが、まさに令和的なダークヒーローだ。
もちろん、ルパンと銭形警部のように、人を魅了する怪盗物語には魅力的な好敵手も必要不可欠。国自党の経理局長として金庫番を任されている夏目将門(高橋一生)とのスリリングな駆け引きも大きな見どころとなりそうだ。この夏目、表ではスマートに立ち回っているけれど、裏では悪態をつきまくり。その本音には、視聴者が「よくぞ言ってくれた」と思うような言葉も含まれているのが、またニクい。主人公の狙いを阻止するだけではない存在として、輝きを放ってくれることだろう。
「政治について考えましょう」と正面から呼びかけない。大泥棒を走らせ、だまし合いをさせ、ハラハラさせる。まず物語に心を開かせる。その隙に、政治とお金、自分と社会の距離について考える種を、そっと置いていく。それは、何度もドラマを通じて、多くの視聴者と現代日本が抱える問題をつなげてきた脚本家・野木亜紀子らしい鮮やかな手口だ。
政治なんて自分には関係のないもの。そんなふうに政治と距離を置いてきた人たちの心を奪い返そうとする弥生の奮闘は、まだ始まったばかり。このドラマを見終えたあと、「ニッポニアはこうなったけど……日本は?」なんて関心が向いていく。そんな未来を、私たち自身も奪いにいこうではないか。
■放送情報
『ポリティカルパン』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00~22:54放送
出演:石原さとみ、高橋一生、河合優実、寛一郎、猫背椿、川西拓実(JO1)、きょん(コットン)、宮本エリアナ、矢野聖人、余貴美子、酒向芳、間宮啓行、岩松了、古館寛治、草刈正雄、渡部篤郎
脚本:野木亜紀子
主題歌:RADWIMPS「娑婆堕罵 -Shabadaba-」(Muzinto Records/EMI)
音楽:岩崎太整 プロデュース:北野拓
制作プロデューサー:白石裕菜 (ホリプロ)、加藤若葉 (ホリプロ)
演出:髙野舞、谷村政樹、及川拓郎
制作協力:ホリプロ
制作・著作:フジテレビ
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