渡部篤郎、『ブラッサム』で放つ圧倒的な存在感 “史上最狂の父親”を成立させたカリスマ性
2020年放送の朝ドラ『おちょやん』(NHK総合)で、酒と賭博に溺れていたテルヲ(トータス松本)が史上最悪の父親だとしたら、『ブラッサム』(NHK総合)の清治(渡部篤郎)は史上最狂の父親だと思う。
まず、初登場の時点でヤバい。馬に乗って町を徘徊したり、歩いているだけの人を怒鳴りつけたり。さらに、娘の珠(村上蘭)に雨のなか「カナリアの餌を買いに行け」と言いつける。これだけでも「自分で買いに行けばいいじゃん」とムカッとしたのに、「草履が痛むから」と裸足で行かせようとする。「草履は腐るが足は腐らん」って、さすがにやりすぎじゃないか? 清治はこんな感じで視聴者のイライラを順調に積み上げてきた。
そんな清治の印象が少し変わったのが、第3回。月明かりに照らされた縁側で、鳥カゴのなかにいるカナリアをじっと見つめる姿が描かれたのだ。家族……というか、人間にはあれほど横暴なのに、カナリアに向ける視線はこんなにも優しい。そして、そのなかにある物悲しさを見つけたとき、清治の横暴さの奥には、まだ語られていない“何か”があるのではないかと思わされた。もしかすると、彼は傍若無人にならなければ自分を保つことができないのかもしれない……なんて思ってしまうのは、彼に同情しすぎだろうか。
清治を演じている渡部篤郎は、もともと独特の色気とカリスマ性をまとった役者である。クールな役柄もハマるし、ひょうきんな役柄もしっかりこなすことができる。多面的な魅力を持つ渡部が演じているからこそ、清治のキャラにも奥行きが生まれているのだと思う。清治は、かなり怖い。やっていることもめちゃくちゃで、腹が立つ。それなのに、なぜだろう。「この人に認められたい」と思わせる力がある。彼には、家族を振り回す厄介さと同時に、強烈な引力があるのだ。そして、その引力を成立させているのが、渡部篤郎という俳優のカリスマ性なのだろう。
そんな渡部は、『ブラッサム』のほかにも、現在配信中のNetflixシリーズ『ダウンタイム』、さらに、10月7日より放送が始まったドラマ『ポリティカルパン』(フジテレビ系)にも出演中。強烈な父親から、美容整形業界で絶大な力を持つ人物、そして影から物語を動かす謎の情報屋まで。立て続けにまったく違う表情を見せるところにも、俳優の懐の深さが表れている。