松岡茉優、感情を削ぎ落として演じた『ダウンタイム』の主人公像 半年間の撮影で得た財産
美容整形というセンシティブなテーマを主軸に、現代社会が抱えるルッキズムや“美”への価値観をスリリングなサスペンスへと昇華させたNetflixシリーズ『ダウンタイム』。主人公・沼田文役で主演を務めたのは、松岡茉優だ。約6カ月に及んだ撮影期間の中で、彼女はいかにして沼田文という泥臭くも愛おしいキャラクターを作り上げ、作品の熱量を届けることに尽力したのか。その裏側に迫った。
いろんな感情を削ぎ落として挑んだ沼田文役
――社会的なテーマ性を強く含みながらも、エンターテインメントとして一気に魅せるスピード感とサスペンスフルな展開に引き込まれました。松岡さんご自身は完成した作品をご覧になっていかがでしたか?
松岡茉優(以下、松岡):裏話なのですが、編集の矢野数馬さんが決定した時、監督が無邪気に喜んでいる姿を目撃してしまって(笑)。あ、監督にとって絶対に組みたかった、この物語に必要なラストピースだったんだな」と思って。実際に完成した映像を観て、「そういうことか!」と監督の表情の理由が分かりました。
――具体的にどのあたりに凄みを感じましたか?
松岡:文ちゃんが過去を想起するときのフラッシュバックや回想シーンの入り方が信じられるんです。彼女の心の中で激しくフラッシュバックしたんだということがストレートに伝わってくる。体感時間が短く、一気に観られる作品になっていると思います。
――編集のテンポ感に加えて、音楽(劇伴)も登場人物の心情や緊迫感にリンクしていましたね。
松岡:音楽、最高ですよね! 登場人物たちの心情に寄り添いつつも、こちらの想像力を掻き立てる。「自分が観て感じたこと」と「本人は実はこう思っているんじゃないか」という引っかかりが生まれるような絶妙な旋律で、サスペンスとしての面白さをより引き立てていると感じました。沼田文と遠山凜(仲里依紗)という2人の医者が運命に翻弄されていく姿を、最高の編集と音楽で楽しんでもらえたら嬉しいですね。
――松岡さんが演じた沼田文は、従来のドラマの主人公のような「清廉潔白な正義のヒーロー」ではなく、短所や泥臭い人間らしさも併せ持つ人物です。演じる上での覚悟やアプローチについて教えてください。
松岡:今回、文ちゃんを演じるにあたって自分の中のいろんな感情を削ぎ落としていきました。「こういうふうに見られたい」とか、「好きになってもらいたい」みたいな感覚は彼女にはいらないなと思って。髪型もファッションも潔いスタイルにしてもらって。
――物語が進むにつれて、視聴者が文に対して抱く感情も揺れ動いていきます。
松岡:途中、彼女の感覚や行いについて、好きになれないと思われる場面も出てくるかもしれません。彼女に対してはそれで良いのだと思っています。それでも、彼女の全ての選択に寄り添っていたいと思っていました。以前、別の作品でお世話になったプロデューサーさんが「あなたの役が生きていられる時間は、この3カ月だけなんだよ」とおっしゃっていた言葉が今でも忘れられなくて。今回は撮影期間が6カ月あったので、いつもの倍近くこの人と生きられるんだから、なるべく深いところまでたどり着けるといいな、と思っていました。ダメなところも、良いところも。
――6カ月という長期間の撮影は、映画や通常の連続ドラマと比べてもかなり贅沢な時間ですね。
松岡:本当にありがたかったです。キャスト同士でお芝居の反応を重ね合い、一緒に成長していく時間がたっぷりあって。スタッフさんたちともすごく絆が深まって。