『豊臣兄弟!』竹中直人のド派手な主役回にあっぱれ “史実”描写へのアンサーも?
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』第20回「本物の平蜘蛛」では、松永久秀(竹中直人)が再び本格登場。第11回以来の主役回であり、名物茶器・平蜘蛛をめぐる彼のド派手な最期が描かれた。
上杉攻めから離脱し勝手に帰国した秀吉(池松壮亮)は信長(小栗旬)を激怒させた。寧々(浜辺美波)や慶(吉岡里帆)たちが集めた血判状を持ってしても信長の怒りを収めることはできず、信長は織田を再び裏切った久秀をひざまずかせ、平蜘蛛を差し出させることができれば、秀吉の失態は目を瞑ると信長は言う。
小一郎(仲野太賀)と秀吉の兄弟に心を許す久秀も、城を築くことができるほどの価値を持つという平蜘蛛だけは譲らなかった。久秀は本物にこだわる男。側女の母を持った久秀は自身を“まがいもの”と思い育ってきたが、父として敬い仕える三好長慶から大和を与えられたことは久秀にとって本物であることの証だった。
ユニークなのが久秀の「……と言ったら信じるか」という決まり文句。「大和には宝が眠っている」と兄弟を驚かせたかと思えば、「……と言ったら信じるか」と全てを戯言にしてしまう。断言を避ける、関西弁の「知らんけど」に近いイメージだ。父が贋作造りの職人だったという背景も影響をしていそうだが、平蜘蛛の本物当てクイズに勝利した小一郎は「人にまがいものなどないと存じまする。百姓じゃろうが、侍じゃろうが、そやつはそやつじゃ。みな本物でございまする」「偽りも、いずれ真になる」「松永様は本物でございまする」と久秀に笑顔で声をかけた。
うまく久秀を説き伏せたかと思いきや、久秀は信貴山城を爆薬で炎上させ、小一郎の説得を虚しく自害へと走る。燃える本丸で久秀が叫ぶ、「何が本物で何が偽物かなどそんなものはどうでもいい! お前らもせいぜい苦しめ。うまく信長を欺くんじゃぞ」というセリフは、期せずして史実か史実でないかにこだわる一部視聴者へのアンサーにも聞こえてくる。また、第1回冒頭のナレーション「天下人へと駆け上がる夢物語にございます。果たして、嘘か真か。お気をつけあれ。彼らは人たらし、決して心奪われませぬように」を思い起こさせるセリフでもある。大河ドラマ『麒麟がくる』(2019年)では、久秀(吉田鋼太郎)の平蜘蛛をめぐり明智光秀(長谷川博己)が信長(染谷将太)に嘘をつくことで不信へと繋がっていくという描かれ方であったが、『豊臣兄弟!』では市(宮﨑あおい)との“嘘から出た実”のエピソードと地続きにある、嘘か真かという豊臣視点での話へと上手く落とし込んでいる。竹中の芝居も見事。“笑いながら怒る人”で知られる竹中による死を覚悟した久秀の笑い泣きは圧巻だ。大量の火薬に引火し信貴山城は大爆発で吹き飛ぶという、これまでの『豊臣兄弟!』の中でもかなり豪快なシーンだが、竹中のインパクトが大きいため、不思議とそこまで気にはならない。
小一郎たちが持ち帰ってきた平蜘蛛は偽物であったが、信長は秀吉の失態を水に流すことにした。本物の平蜘蛛は信長が所持しており、信長は秀吉を許す理由を探していた。さらに、偽物の平蜘蛛の中には久秀が話していた金銀財宝が眠ると言われる大和の宝の絵図が出てくるという、夢のある終わり方だ。
第21回「風雲!竹田城」では、秀吉に仕える軍師・黒田官兵衛(倉悠貴)が初登場。予告時点ですでに苦虫を噛み潰したような竹中半兵衛(菅田将暉)の表情が見て取れる。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK