ダ・ヴィンチ・恐山も唸る『ミステリー・アリーナ』の魔力 「今の邦画にこれがなかった」
犯人を当てたら賞金100億円! 解けなければ、消えるのみ!? 唐沢寿明主演、堤幸彦監督によるミステリーエンターテイメント『ミステリー・アリーナ』が5月22日に公開される。
原作は、2016年度「本格ミステリ・ベスト10」第1位に輝いたのをはじめ、数々のミステリーランキングに入賞した深水黎一郎の同名作。推理クイズ番組「ミステリー・アリーナ」を舞台に、狂気の司会者・樺山桃太郎と天才たちによる頭脳戦が繰り広げられる。
“映像化不可能”と言われてきた思いもよらないアイデア満載の本作について、常に奇抜な発想で世界を揺るがし続ける「オモコロ」でおなじみ、文筆家のダ・ヴィンチ・恐山にその魅力をたっぷり語ってもらった。(大山くまお)
「観た後に怒る人を想像してニヤニヤしちゃう(笑)」
――ダ・ヴィンチさんは深水黎一郎さんによる『ミステリー・アリーナ』の原作小説を読んでいらっしゃったそうですね。
ダ・ヴィンチ・恐山(以下、恐山):そうですね。半年ぐらい前にたまたま読んでいて、その後、映画化決定のニュースを聞いたので、映画の存在自体は結構意識していました。
――元々ミステリー小説が好きだったのですか?
恐山:マニアというほどではないですが、小説を読むときはついミステリー小説ばかり読んでしまいます。なかでも特殊な設定のミステリーがかなり好きで、まず実現したいトリックや奇想が先にあって、そこから組み立てたような非現実的に惹かれます。「作者さん、すごいこと考えるな」と驚くのが好きですね。『ミステリー・アリーナ』は、まさにそのような作品でした。
――そして今回、ついに映画化されました。
恐山:原作では小説ならではのトリックが多かったりしたので、「映像として成立するのかな?」と気にはなっていたのですが、映画として映えるように、大小さまざまなアレンジが加わっているし、まったく原作にない新しい奇想が加わっていたりして、それがすごくよかったなと思いましたね。原作と違うのだけれど、原作と同じマインドで違うアイデアが加わっているのが面白かったです。
――クイズ番組という形式もユニークです。
恐山:マンガで『国民クイズ』という作品があって、ベースの部分でつながりを感じました。『国民クイズ』にはK井K一という司会者が出てくるのですが、『ミステリー・アリーナ』の樺山桃太郎(唐沢寿明)はその延長線上にいるようなトリックスターとして映像化されている感じがありますね。原作と比べると、映画では樺山の存在が常に強くフォーカスされていたと思います。唐沢さんがすごく安っぽいアフロを被って、意図的にペラペラな業界人を演じていますよね(笑)。挑発的なことしか言わないし、番組を成立させるために作られた虚像としてのキャラクター。彼という存在も一つの大きな謎という形になっていると思います。
――ミステリーにも大きく関わっていましたね。
恐山:まったく原作にはないオリジナルのラストでしたが、あれもすごく好きなんです。もしかしたら観た人の何十%かは怒るかもしれませんが、それすら想像するとニヤニヤしちゃう(笑)。その綱渡りをしているところが好きなんです。思いもよらない、、人によっては「なんだそりゃ!」となる設定ですが、よく考えるとロジックの隙はふさがれていて、冒頭からちゃんと正当化できる描写が挟み込まれているんですよね。思い返してみると、「たしかにそうだった」と伏線がちゃんと張ってある。ちょっと憎たらしかったです(笑)。
映像化で生まれた新しいトリックに「やられた……」
――樺山のダンスが頭にこびりついて離れないのですが……。
恐山:あの「ミステリー・アリーナ」という番組は、何千万人も観ている割に低予算な感じがしますね(笑)。たぶん、映画製作上のリアルな予算の都合もありつつ、開き直って「こんなチープな番組で大金と命のやり取りが行われている」という皮肉に転換しているんだろうな、と思います。結構えげつないことをやっているのを隠さずに見せているところがよかったですね。
――ほかに「やられた」と思ったポイントはありましたか?
恐山:原作では小説のテキストを読みながら推理を披露するところがメインですが、映画では樺山が読んだテキストが映像になって再現ビデオのように表示されるという新しい設定が加わっていました。この発想に「やられた……」と思いました。映像であることの意味が生まれるのと同時に、その設定を組み入れたことによる新しいトリックが生まれていたので、単に小説を映像化するだけではなく、あの映画だからできる面白さがありましたね。登場人物の見た目が新情報の影響でモーフィングしていくのは、映像ならではですごく面白かったです。それでいて無駄な要素は省かれていて。「館ものミステリー」ですけど、彼らが一体どんな関係で、何の集まりなのか全く明かされない(笑)。その割り切りも含めて、とにかく「このあっと驚く仕掛けを見てほしい!」という気持ちを前面に出した娯楽に徹した作りが、すごくソリッドで好きですね。
――とにかく観客をあっと驚かせることに徹していると。
恐山:だから、映画館で観終わったあと、喫茶店やハンバーガーショップなどで、ああだこうだと友達と言い合うのが楽しいと思いますよ。