今田美桜と振り返る『あんぱん』のぶの軌跡 北村匠海は「さらっと救ってくれる人」

「もうこんな経験は2度とできないかもしれない」

 NHK連続テレビ小説『あんぱん』のヒロインという大役を通して、俳優として濃密な時間を過ごしている今田美桜。視聴者からの温かい声援を力に変え、激動の昭和を生きる女性・のぶの人生を全身全霊で表現している。夫・次郎(中島歩)との別れや“運命の人”・嵩(北村匠海)との再会といった大きな節目を、彼女はどのように受け止め、演じてきたのか。役と共に生きる中で見つけた“財産”と、作品への深い愛情を明かした。

「のぶと一緒に生きていた感覚」

――視聴者のみなさんやメディアの声というのは今田さんにとって励みになっていますか?

今田美桜(以下、今田):メディアのみなさんもそうですし、視聴者の方々のコメントは撮影の励みになっています。のぶは小さい頃は思ったことを口にしていましたが、大人になるにつれて、自分が一度間違ってしまったという罪悪感もあり、本音を口にすることが少なくなるんです。でも、みなさんが表情から感じ取ってくださるので、細かく観てくれているんだととても嬉しく思います。

――『あんぱん』のオンエアを観て感じることもありますか?

今田:撮影は先を進んでいたので、「私、この時こんなことを考えてたかも」と思い出すのと同時に、懐かしさも感じています。朝とお昼の時間帯の放送は、支度中だったりお昼休憩でご飯を食べながら、みんなで観たりするんです。自分が知らないシーンもあったりするので、みんなで「この時こうだったね」「懐かしいね」などと言いながら一緒に観る時間が好きです。

――のぶを演じてきて、今田さん自身にとってどんな経験になっていますか?

今田:もう役としてなのか、自分としてなのかも分からなくなるぐらいに、悩んだり、涙したりをしていて、のぶと一緒に生きていた感覚です。そのことは財産だし、もうこんな経験は2度とできないかもしれないと思います。

――中島歩さん演じる夫の次郎が第13週で亡くなりました。次郎が撮っていた写真のフィルムを、のぶが現像するところは名シーンでした。

今田:次郎さんとのシーンは、撮影自体2週間ぐらいで意外と少なかったんです。そのシーンは、次郎さんからの愛情を受けてきたんだというのことを現像した写真や、若松家のお家から感じられて嬉しかったですね。忘れられないシーンです。

――次郎は「自分の目で見極め 自分の足で立ち 全力で走れ 絶望に追いつかれない速さで」というメッセージを、速記でのぶに残していました。

今田:のぶが胸に刻んで、これからを駆けていくための大事な言葉です。走るのが大好きなのぶらしさを思い出しましたし、のぶと嵩、2人にとっても大事になっていく言葉として、撮影していました。

――戸田恵子さんが演じる代議士・薪鉄子は、後にのぶの人生に大きな影響を与えていくことになる人物として登場しました。

今田:鉄子先生は嵐のようなキャラクターで、のぶ以上のハチキンだと思っています。戸田さんご自身もパワフルな方でした。セリフ量がすごくて、その上、土佐弁で。私が初めて土佐弁で芝居をした時はずれたりすることもあったんですけど、戸田さんに関してはそれを全く感じないんです。のぶにとって鉄子先生は高知新報から東京に出てこないかと導いてくださった方で、厳しくも、愛情深い人です。

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