風間俊介の武器は“振れ幅”と“一貫性” 月9&BLドラマ初主演作で示すバイプレイヤー力

 若くして“バイプレイヤー”だと評される演技者は数多くいるが、このポジションを維持していくのは容易ではないだろう。年齢を重ねるにつれてパブリックイメージが定着し、演技の幅が広がっていくいっぽうで、誰もが座れるほどのイスは用意されていないのが現状だ。若手時代にその名を知らしめるのも大変だが、やはり生涯現役で続けていくことこそが難しい。けれども、風間俊介はどうだろうか。彼ならば、10年後、20年後の姿が想像できる。そんな俳優のひとりなのではないだろうか。

 そんな彼は現在放送中のドラマ『40までにしたい10のこと』(テレ東系)で主演を務めているところ。本作は、年齢や性別の垣根を越えた大人のオフィスラブストーリーだ。40歳を目前に控えた主人公・十条雀(風間俊介)は、人生のひとつの大きな節目に焦りを感じ、“40までにしたい10のことリスト”を作成する。その内容は、「タコパ」「服の趣味を変える」「恋人を作る」といった、いずれも等身大のもの。このリストを部下の田中慶司(庄司浩平)に見られてしまったことから物語は展開していく。いつだってスマートな慶司は、ともに願いを叶えてくれる特別な存在になっていくのだ。

『40までにしたい10のこと』©マミタ・libre/「40までにしたい10のこと」製作委員会

 職場での雀は、仕事のできる面倒見の良い上司。けれどもプライベートでは、ぬいぐるみや可愛らしいものが好きな人物だ。いわゆるギャップのあるキャラクターである。職場での彼のことしか知らない者からすれば、プライベートでの雀の姿は意外なものとして映るだろう。その逆もまた然り。この差異が大きければ大きいほど、私たち視聴者は驚きを得ることになる。雀のこの表情の違いは、たしかに意外性のあるものだ。

 しかし、物語のはじまったばかりの頃から多くの視聴者が、彼のこの意外性をすんなりと受け止めていたのではないだろうか。それは風間が体現する雀というキャラクターに一貫性があるからだ。ギャップ=差異=意外性を大きく見せるため、極端な演じ分けをすることだって風間にならできただろう。だが彼は十条雀という人間のコア(=軸)を強固な状態で維持しながら、シーンに合わせて、雀の心情の変化に合わせて、そっと揺らすのにとどめているように思える。だからこのキャラクターは親しみやすく、くるくると変わる表情が愛おしく感じられるのだろう。その変化は自然体でシームレスだ。

『40までにしたい10のこと』©マミタ・libre/「40までにしたい10のこと」製作委員会

 この『40までにしたい10のこと』の放送開始直後に、月9ドラマ『明日はもっと、いい日になる』(フジテレビ系)もはじまった。風間は海沿いの街にある浜瀬市児童相談所に勤める児童福祉士の蜂村太一を演じている。蜂村はここのリーダーだ。その口調も態度も、穏やかな人物である。

 本作は、神奈川県警から出向してきた主人公・夏井翼(福原遥)を中心とした物語が展開するもので、その上司を演じる風間はほとんど完全に脇に徹している。これは若き主人公の成長物語でもあるから、風間はサイドから支え、ときに手を引くようなポジションにある。だが、第5話は蜂村太一のメイン回となりそうである。

『明日はもっと、いい日になる』©︎フジテレビ

 児童福祉士の面々は教師や保育士などとはまた違う、子供たちと関わるプロだ。しかし、彼ら彼女らもまた、人の子であり、子の親であったりするわけで、そこで誰もが完璧な関係性を構築できているとは言い難い。どうやら蜂村もそんなひとりのようだ。彼は離婚した元妻・工藤沙織(笛木優子)との子供である功太(三浦綺羅)との面会日を心待ちにしているが、第5話では小さな、けれどもこの親子にとっては重大で切実な事件が起こるらしい。

 ここまで視聴者の感情を揺さぶってきたのはおもに、主人公の翼や、彼女が向き合う家庭の人々である。登場人物たちの心の動きと私たちの心の動きが、共鳴し合ってきた。最新話で私たちの感情を揺さぶるのは、どうやら蜂村になりそうである。本作において風間が維持してきた蜂村の表情は、どのような変化を見せるのだろうか。真のバイプレイヤーは、主役にだってなれるものだ。風間は放送中の大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』(NHK総合)にも出演中だが、同作にもそういった瞬間が何度かあった。いま改めて、私たちは演技者・風間俊介の芝居力を堪能できる機会にあるのだ。

明日はもっと、いい日になる

児童相談所を舞台に、そこで働く個性的な面々たちがこどもたちの純粋な思いに胸を打たれ、その親までも救っていく姿描く完全オリジナルストーリーのヒューマンドラマ。

■放送情報
『明日はもっと、いい日になる』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:福原遥、林遣都、生田絵梨花、小林きな子、濱尾ノリタカ、莉子、西山潤 町田悠宇、勝村政信、風間俊介、柳葉敏郎ほか
脚本:谷碧仁(劇団時間制作)ほか
演出:相沢秀幸、下畠優太、保坂昭一
プロデュース:宮﨑暖
主題歌:JUJU「小さな歌」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作プロデュース:熊谷理恵、三浦和佳奈
制作協力:大映テレビ
制作著作:フジテレビ
©︎フジテレビ
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