『光る君へ』黒木華がハマり役過ぎる“穏やかで怖い”倫子 道長の歌をどう受け止めるのか

 「私は殿に愛されていない」という言葉に対して、正直者の道長は「そんなことはない」などと否定しない。第38回「まぶしき闇」で息子の頼通の結婚相手の話が出たときのこと。倫子は自分の両親がそうだったように、まず頼通の気持ちはどうなのか気にかけた。ところが道長は「妻は己の気持ちで決めるものではない」と言い、自分の結婚相手が自分の意志とは別に父に決められていたように、父である自分に決定権があると決めつけていた。そして「男の行く末は妻で決まるとも申す。やる気のなかった末っ子の俺が今日あるのも、そなたのおかげである」と倫子への感謝はしつつ、愛があっての結婚ではないことをはっきり伝えていた。

 そんな道長に対して感情的になったり、落ち込んだりしないのが倫子であり、その堂々とした振る舞いに目が釘付けになる。道長に愛されていないという事実を受け止めつつ、「子どもたちのお相手を早めに決めて、その後は殿とゆっくり過ごしとうございます。二人っきりで」と倫子は道長に甘えるように寄り添ったが、道長にそんな気がないのは表情から見ても明かだった。

 豪華絢爛な衣装に身を包み、艶やかな表情を見せる黒木華は平安絵巻からイメージされる優雅な姫そのもの。平安時代においても理想的な妻にピタリとハマるが、それだけではない深みと奥行きが倫子というキャラクターから感じられるところにも魅了される。

 11月17日放送の第44回「望月の夜」の予告では、藤原実資(秋山竜次)が日記『小右記』に残した〈この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の かけたることも なしと思へば〉という道長が歌を詠む場面が見られる。その前日の11月16日は道長が歌に詠んだ月と同じ形の、満月(望月)から少し欠けた月が見られるという。

 寛仁2年10月16日(ユリウス暦1018年11月26日)に道長の娘、彰子(見上愛)は太皇太后、妍子(倉沢杏菜)は皇太后、威子(佐月絵美)が中宮となり、道長の三人の娘が三つの后の地位を占めることとなった。土御門殿で開催された威子が中宮になった祝いの宴はどれほど賑やかだったのだろうか。

 倫子の見る目があったとはいえ、ここまで出世するとは予想を遥かに超えていたはず。道長が歌に詠んだ月を倫子はどんな思いで眺めたのか。

 物語も残すところあとわずか。冷静で賢く、本心を簡単には見せない倫子がこれからどんな言葉で道長をドキリとさせるのか。まひろとの関係に変化は生じるのか。最後の最後まで気高く、チャーミングな倫子のことを見届けなくては。

■放送情報
『光る君へ』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/ 翌週土曜13:05〜再放送
NHK BS・BSP4Kにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送
出演:吉高由里子、柄本佑、黒木華、井浦新、高杉真宙、吉田羊、高畑充希、町田啓太、玉置玲央、板谷由夏、ファーストサマーウイカ、秋山竜次、三浦翔平、渡辺大知、本郷奏多、ユースケ・サンタマリア、佐々木蔵之介、岸谷五朗、段田安則
作:大石静
音楽:冬野ユミ
語り:伊東敏恵アナウンサー
制作統括:内田ゆき、松園武大
プロデューサー:大越大士、高橋優香子
広報プロデューサー:川口俊介
演出:中島由貴、佐々木善春、中泉慧、黛りんたろうほか
写真提供=NHK

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