『ブギウギ』なぜ史実とは異なる“事後報告”にしたのか 制作陣が“2つの世界”に込めた願い

 NHK連続テレビ小説『ブギウギ』が現在放送中。“ブギの女王”と呼ばれる笠置シヅ子をモデルに、大阪の銭湯の看板娘・花田鈴子=福来スズ子(趣里)が戦後のスターへと上り詰めていく姿を描く。

 スズ子の出産と愛助(水上恒司)の死という“明と暗”が描かれた第18週。産後から2日後、事実を聞かされたスズ子は「なんでワテの大切な人は、早よういなくなってしまうんや……ワテも死にたい」と生気を失ってしまう。

 制作統括の福岡利武は「趣里さんの中に今までの積み重ねがありますので、比較的自然なかたちで撮影は始まりました。お芝居においても、これまでの愛助への想いがあるので、素直に感じたままを表現されたのではないかなと。あえて準備しすぎることはなく、現場での状況と、スズ子の置かれた状況とを感じながら演じられて、その表情、お芝居がとてもすばらしかったです」と振り返る。

「趣里さんは、最初に台本を読んだときから準備期間を含めると、すでに1年ほどはスズ子を意識しながら生活されていらっしゃるので、その中で感じることをとても大事にされていました。山下(近藤芳正)の言葉を受けて、本当に引き込まれる、共感できるお芝居になっていくところは素晴らしいなと思っています」

 実は、ドラマではスズ子の出産と愛助の死はほぼ同時として描かれたが、史実では笠置の出産2週間ほど前に、パートナーの吉本頴右が逝去。その事実も出産前に告げられたという。

「脚本の足立(紳)さんとも、このあたりの順序についてはだいぶ議論しました。難しいところですが、足立さんは『伝えるのは後にしたい』と。愛助のためにも、スズ子にはしっかりと元気な子どもを産んでほしい、との思いから、出産前に伝えるのは酷なんじゃないかとおっしゃっていたのが、すごく印象的です」

 福岡が懸念したのは、生と死を同時に描くことで“ドラマの仕掛け”が匂ってしまうのでは、ということ。「あまりにドラマチックすぎて、視聴者が冷めてしまうのではないか」と不安もあったというが、足立の「この流れが一番自然でしっくりくる。スズ子にとって残酷すぎて、生まれる前に『亡くなった』と知らせることはできない」との意向を重んじた。

 結果として、「すごく引き込まれる展開になって、よかったと思います」と福岡。さらには視聴者を惹きつけた理由について、「趣里さん、水上さんのお芝居のなせる技だと思います。しっかりとご自身の置かれたところを演じていただけたので、(視聴者が)それぞれの気持ちに共感できたんだと思います」と語った。

 なお、愛助がこの世を去った日、雨を降らせることで深い悲しみが表現されていたが、そのアイデアは演出を担った二見大輔によるもの。福岡は「2つの世界を描くために、雨を用いています」と明かした。

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