『オールドルーキー』田辺桃子が流した涙の理由 新町と高柳の関係が終盤のポイントに?

 『オールドルーキー』(TBS系)第8話は、働く女性にとって他人事と思えない内容だった。お弁当レシピ本がベストセラーになった果奈子(榮倉奈々)に講演依頼が舞い込む。オファー内容は「引退した夫に代わって家族を養う立場になった」果奈子に、女性の自立をテーマとして話してほしいというもの。果奈子は新町(綾野剛)の気持ちを考えて断ろうとするが、新町は果奈子の背中を押す。

 第8話の主役はキャリアに悩む一人の女性だった。女子バレーボール「東京ウィンディア」の古川舞(田辺桃子)にイタリアの強豪・トリエステからオファーが届く。しかし、チーム唯一のプロ契約選手である舞はオファーを断ってしまう。チームに残留して優勝を目指すというのがその理由だった。ビクトリー社長の高柳(反町隆史)は、担当の塔子(芳根京子)に舞の説得を命じ、かほり(岡崎紗絵)を目付け役として同行させる。

 マネジメントはアスリートを支えるのが仕事だが、移籍の判断がアスリートとマネジメントで分かれたら、どうするべきだろうか。「アスリートの判断が間違っていることもある」と高柳は口にする。意に沿わない移籍を実現すべきか、塔子は新町に悩みを打ち明けた。かほりの報告を聞いて、舞の気持ちが揺らぐことを危惧した高柳は、移籍先のスカウトを日本に招いて舞との直接交渉に乗り出す。さらに新町を水泳の麻生健次郎(渡辺翔太)の担当に任命。アスリートの意向を尊重する新町を舞から遠ざけるためでもあった。

 ここに来て新町と高柳の考え方の違いがはっきりしてきた。「アスリートはマネジメントを担当する人間との信頼関係を大事に思っている」と話す新町に対して、高柳は「会社がなければスポーツマネジメントはできない。アスリートもサポートしてもらえない」と、会社全体の利益を強調する。新町と高柳の相違は、組織と個人の相克ともスポーツと経済原理の対立ともいえる。プロアスリートは個人事業主であるが、スポンサーがいなければ競技を続けることができない。自由と束縛によって成り立つのがプロであり、この点をいかに調和させるかがマネジメントの腕の見せどころになる。

 アスリート寄りの考えを持つ新町が、組織である会社の利益と衝突する可能性を高柳は早くから見抜いていた。それにもかかわらず新町を採用したのは、元日本代表の新町に利用価値を認めたからだ。当初はワンポイントリリーフで、後に正社員にしたのは実績を残したからだが、ビクトリーへの貢献度だけで説明できない要素もある。高柳は新町を会社の潜在的なリスクとみなしてかほりに見張らせるが、新町がビクトリーに吹かせる新しい風を否定することもない。葛飾(高橋克実)やかほりとの会話からは、むしろ新町のスタンスに共感するそぶりすらある。経営者としての高柳が懐の深い人物であることがわかってきた一方で、果奈子のレシピ本を見てお弁当を自作する姿は「社長の異常な愛情」と形容できそうな執着ぶり。これが何かの伏線でなければいいのだが……。いずれにしても、ドラマ終盤に向けて新町と高柳の関係がポイントになりそうだ。

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