『カムカム』安子と稔に現実を突きつける 段田安則&甲本雅裕が示す父親像

 安子の父・金太(甲本雅裕)もまた、娘に“現実”を突きつける覚悟を決めた。「たちばな」の跡を継ぐはずだった息子の算太(濱田岳)が自由奔放に生きている以上、安子に婿を取ってほしいと思うのは当然のことだろう。しかし、金太は安子に無理にお見合いをさせようとはしなかった。稔との交際を知った時も、全力で応援することはなくとも、頭ごなしに別れさせようとはしない。雉真繊維の跡取りである稔との恋が上手くいくはずがないことは、金太も分かっていたはずだ。いずれ、別れなければならない日がくることも。

 いつか必ず、大事な娘が傷付く時が来る。そう分かっていながら、見守り続けることがどれだけ辛かったことか。第12話で「会うてやって下さい。それが一時、安子を苦しめることになっても」と稔に頭を下げた金太の表情。彼もまた千吉と同じように、子どもに“現実”を突きつける覚悟を決めたことが伝わってきた。

 子どもが苦しむ姿を見たい親なんていない。稔から手を引かせるために、安子に手切金を渡した美都里(YOU)も、息子の幸せを願うがゆえのことだったのだろう。それに彼女は、夫の千吉が雉真繊維を大きくするために奮闘してきたことを、誰よりもそばで見てきた。そのおかげで、自分が幸せな生活を送れていることを分かっている。だから、雉真の跡を継ぎ、良家のお嬢様と結婚することこそが、稔にとっての幸せだと信じているのだ。

 それにしても、稔と安子の縁を繋いでしまったのが、2人の父親だというのがなんとも皮肉である。千吉が、金太の作ったお菓子を気に入らなければ、安子と稔がこんなにも仲良くなることはなかったのだから。だが、それもまた2人を結ぶ“縁”だったのかもしれない。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:上白石萌音、深津絵里、川栄李奈ほか
脚本:藤本有紀
制作統括:堀之内礼二郎、櫻井賢
音楽:金子隆博
主題歌:AI「アルデバラン」
プロデューサー:葛西勇也・橋本果奈
演出:安達もじり、橋爪紳一朗、松岡一史、深川貴志、松岡一史、二見大輔、泉並敬眞ほか 
写真提供=NHK

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