星田英利演じる千之助が初めて見せた本音 『おちょやん』が描く“捨てられた”者たちの絆

 『おちょやん』(NHK総合)第69話では、千代(杉咲花)たちが鶴亀家庭劇が万太郎一座に勝つ方法を見つける。

 万太郎十八番として日替わりで打つ演目の台本を見せつけられ、“鶴亀勝てん劇”と馬鹿にされた千代。万太郎(板尾創路)には、それほどまでに一座に対する人気と実力の自信があった。

 千之助(星田英利)は自分でも分かっていた。劇団のために必要ないと判断され容赦なく自分を切り捨てた万太郎が絡むと冷静でいられなくなることを。それでも千之助は役者を続けている。万太郎に勝ちたい。負けて見下されるのが怖い。万太郎に認めてもらいたい。須賀廼家万太郎という役者が大好きだった。千之助はやっと自分の気持ちに正直になる。

 そして、自分勝手で傲慢だった千之助が、初めて一平(成田凌)に頭を下げる。「頼む、力を貸してくれ」と。「あれ、何や」と一平と千代の視線をそらし、頭を下げるその瞬間を見せないのは2人への気恥ずかしさ、喜劇一座の役者としての小さなプライドからか。

 一平は「俺が力を貸すんやない。2人して力合わせますのや」と千之助の手を取り合う。嬉しさのあまり思わず「おおきに」と握り返す千之助に、微かに一平の頬も緩む。

 けれど、2人での台本作りになるといつものように喧嘩が始まる。一平の書く台本に千之助の容赦ないダメ出し。書斎にはくしゃくしゃに丸まった原稿用紙がいくつも散らばっている。言い争い、行き詰まりながら、辿り着いたのが親子であると同時に、師弟関係でもある父と息子の物語『丘の一本杉』。昼夜を忘れて台本作りに取り組んだ、一平と千之助の初めての共同作品だ。

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