草なぎ剛が語る、“新しい地図”立ち上げから1年の変化 「新しい冒険がどんどん始まっていく感覚」

一目惚れのシーンはリアルかも!?

ーーヴィンス役の柄本時生さん、ウィリー役の満島真之介さんとは収録時に、なにかお話はされたんですか?

草なぎ:いえ、収録してるときは別々だったので。完成披露イベントで、初めて会ったくらいです。

ーーえ! やりとりのシーンもすべてですか?

草なぎ:そうそうそう。だいたい、アテレコってそんな感じですよ……ふふふ、「ですよ」って、僕もそんな知らないんだけどさ(笑)。でも、みんなひとりでやってるよー、絶対! むしろそっちのほうが、ラクっていうか。

ーーすごく自然な掛け合いだったのでびっくりです。草なぎさんが収録されるときには、みなさんの声は?

草なぎ:入ってない! 僕いちばん最初だったから。みんなが僕に合わせてくれたんですよね。だから、一番やりやすかったのかも。でも、別々に撮ってるのに友情がちゃんと描かれてて、バッチリでしょ!

ーーあの涙で声が震えているのも?

草なぎ:うん、僕ひとり。だって恥ずかしいじゃないですか、横に誰かがいて「ううぅぅ~(泣)」とか! だから、僕はひとりでやったほうが好きなところもあるんですよ。相手がいると、むしろ緊張しちゃう。

ーーでは、お気に入りのシーンを挙げるとしたら?

草なぎ:いろんなシーンがありましたよね。そうだなー、格闘シーンも楽しかったし、ゴキちゃんたちと戯れてるシーンも面白かったですけど、やっぱりクライマックスかな。キスシーンもあるし!

ーーキスシーンもおひとり……だったんですよね?

草なぎ:アハハ! うん。別にそこはチュッとか音立てることなかったから、ただ見てるだけだったんだけどね。彼女、ルナちゃん好きだなー! (フレンチブルドッグの愛犬)クルミみたいにムッチリしてて。僕は、ぽっちゃりムッチリの人が好きだから。

ーーアンジェリーノがルナに一目惚れするシーンは、リアルだったんですね。

草なぎ:そうそうそう、すごく好き。かわいい!

自分が納得いく自分になりたい

――ボイスキャストといえば、2005年公開の『ロボッツ』で主人公のロドニーを演じていましたね。透明感のある声が印象的でした。

草なぎ:ありがとうございます。あれから、もう10年以上経ってるんですよね。年齢も違うし、状況も変わったし、きっと声も変わってると思う。時の流れに逆らうわけにもいかないし、本当に同じことってできない。でも、それが、なんか人生なんだな、みたいな。アンジェリーノの人生も今回も僕と出会って、この瞬間の声を僕は入れただけ、というか。そんな感覚なんですよね。『ムタフカズ』は、アンジェリーノがスクーターで走るシーンから始まるんだけど、これまでの彼の人生は見ていないからわからないし、この作品の先のアンジェリーノがどんなふうに生きていくのかもわからない。そんな風に考えると、その瞬間の声を僕がやっただけで、僕の人生も続くし、アンジェリーノの人生も続くんだなーって思って。お互い様なんですけどね。その時、その瞬間しか出せない僕の声だったり気持ちだったりを、うまくこのアンジェリーノが引き出してくれたと思います。

ーー奮闘するアンジェリーノの生き様に、共鳴する部分も多かったのでしょうか?

草なぎ:そうですね。自分の中にあるものを出さないと、観客のみなさんに伝わらないなって思っているのは、どの作品も一緒で。アンジェリーノが、仲間のために自分であることにこだわり続けたっていうところには響くものがありました。ポジティブだったり、ネガティブだったり、正義だったり、悪だったりっていう心が、誰しもあるじゃないですか。アンジェリーノがぶつかったものは、僕ら人間にとっても同じだなって。彼の意地というか、強さを大事にしながら演じようって。同時に、僕自身も真面目に生きていかないといけないなって思わせてくれた。

ーー草なぎさん自身が鑑賞後に一番心に残ったのはなんでしたか?

草なぎ:普遍的なテーマではあるんですけど、仲間の大切さですね。アンジェリーノとヴィンスとウィリー、3人で月を見ているときに、流れ星にお祈りするシーンがあって。そこでアンジェリーノが「俺は納得いく自分になりたいかな」って言うんだけど、とてもいいセリフで心揺さぶられました。“本当にそう思う、僕も!“って。普段、どこかで思ってるんだけど、なかなか一言で言い表せないことを、アンジェリーノが教えてくれた感じです。

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