「週末映画館でこれ観よう!」今週の編集部オススメは『君が君で君だ』

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、リアルサウンド映画部のわんぱく女子・大和田が、『君が君で君だ』をプッシュします。

『君が君で君だ』

 松居大悟×池松壮亮のタッグと聞けば、クリープハイプの尾崎世界観の原案を元に作り上げた『自分の事ばかりで情けなくなるよ』が初めて筆者が観た作品だった。4曲を元に、それぞれの人物にスポットが当てられたストーリーで構成され、池松は、クリープハイプの人気ナンバー「憂、燦々」のMVとの繋がりもあった、トレーラーハウスで生活する青年として出演。一つひとつの曲が、映像によって関連性を持って紡がれていく同作は、音楽と映画の新しい表現としても形を残した。

 池松はその後の松居監督作『私たちのハァハァ』にも出演。福岡県北九州市に暮らす高校3年生の4人が、クリープハイプのライブを見るため、自転車に乗って東京都を目指すという物語で、同作でも前作同様に松居と池松と尾崎が関わっていた。そして今作『君が君で君だ』にも、少し変わった形で松居と池松と尾崎が関わっている。ここでいう“尾崎”は、クリープハイプではなく、尾崎豊。先日リアルサウンド映画部で行ったインタビュー(近日公開予定)では、池松と松居が、尾崎世界観と同様に、2人が共通して影響を受けているのが尾崎豊だと話していた。劇中では池松らが尾崎豊の名曲を熱唱したりと、この作品でも音楽でストーリーが彩られるシーンが満載となっている。

 本作では、「好きな女の子の大好きな人になりきる」という名のもとに、池松が“尾崎豊”、満島真之介が“ブラッド・ピット”、大倉孝二が坂本龍馬”になりきり、10年もの間、キム・コッピ演じるヒロイン・ソン、通称“姫”を見守っている。“見守る”と書いたが、姫の家の道路を挟んで向かいの部屋に3人で暮らし、盗聴や監視を続ける姿は、ストーカーの行動を超える異常さだ。姫と同じタイミングで同じインスタントラーメンを食し、同じタイミングでトイレを済ます。姫の泣き声が聞こえてきても、助けにはいくことできない。彼らは、住んでいる部屋を国と呼び、その国からは出ることなく、姫を見守り続ける。

  本作に登場する役者たちの新しい演技が見れるのも見どころである。爽やかな青年役を演じることが多い高杉真宙が、バンドマン崩れで、彼女にお金を稼がせるヘラヘラした男を演じ、『君が心に棲みついた』(TBS系)での怪演が話題になった向井理が、借金取りとして特徴ある眉毛で出演。YOUとの掛け合いには、クスっとしてしまうシーンも収められている。

 また、先週まで放送されていた『宮本から君へ』(テレビ東京系)で、宮本役として、熱い眼差しで我々に様々なことを訴えかけてくれていた池松が、本作でも、また違う形での愛し方を伝えてくれる。ぜひ、劇場で受け止めていただきたい。

■公開情報
『君が君で君だ』
7月7日(土)新宿バルト9ほか全国公開
出演:池松壮亮、キム・コッピ、満島真之介、大倉孝二、高杉真宙、中村映里子、山田真歩、光石研(特別出演)、向井理、YOU
監督・原作・脚本:松居大悟
音楽:半野喜弘
制作:レスパスフィルム
配給:ティ・ジョイ
(c)2018「君が君で君だ」製作委員会
公式サイト:https://kimikimikimi.jp

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