カラム・ターナーが語る、『さよなら、僕のマンハッタン』でジェフ・ブリッジスから学んだ大切なこと

 マーク・ウェブ監督最新作『さよなら、僕のマンハッタン』が4月14日より公開される。ウェブ監督が『(500)日のサマー)』以前に脚本に出会い、10年以上の歳月をかけて完成させた本作は、マンハッタン生まれの悩める青年トーマスが、見知らぬ隣人や父の愛人との出会いを通して、成長していく模様を描いた青春映画だ。

 今回リアルサウンド映画部では、主人公トーマス・ウェブを演じた英国俳優カラム・ターナーにスカイプ・インタビューを行った。今冬公開予定の『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』でエディ・レッドメイン演じる主人公ニュート・スキャマンダーの兄役にも抜擢されるなど今勢いのある彼に、マーク・ウェブ監督との初タッグについてや、共演したジェフ・ブリッジスから学んだことなどを中心に話を聞いた。

「ジェフ・ブリッジスからは全てを吸収したかった」

ーー今回の作品はもともと『セッション』のマイルズ・テラーが主演を務める予定だったそうですね。どのような経緯で出演することになったのでしょうか?

カラム・ターナー(以下、ターナー):3~4ヶ月後には撮影に入るという段階で彼が降りてしまったんだよね。僕はもともとこの作品の脚本を読んでいて完璧だと思っていたから、その話を聞いてすぐにテープを送ったんだ。そしたらマーク(・ウェブ)がそれを気に入ってくれて、一緒にやりとりをしようという話になったんだよね。そこで僕は自分からニューヨークに行く話を持ちかけて、次の日にはニューヨークに向かっていたよ。実際にマークと会っていくつかのシーンを演じたんだけど、その時点でもうマークは僕をトーマス役に決めてくれていたみたいだったね。

ーーマーク・ウェブ監督の印象はどうでしたか?

ターナー:マークはとても素晴らしい映画作家だね。『(500)日のサマー』は僕の大好きな作品で、あんな完璧な作品は他にはないと思うくらいなんだ。それで今回実際に仕事をしてみて気付いたのは、マークがとても柔軟でオープンな監督だということ。このルールに従わなければいけないということではなく、違うやり方も受け入れてくれる、コラボレーターのような感じだね。作品をよりよいものにするための案だったらどんどん出してほしいというタイプの監督で、とてもやりやすかったよ。

ーー監督はトーマス役には「大人と少年の狭間にいる俳優を探す必要があった」と明かしていました。大人と少年の狭間を演技で表現するのはとても難しかったのではないかと思うのですが、役作りはどのように行ったのでしょうか?

ターナー:この作品における自分の役割、そしてトーマスがどういう人物なのかを理解することが最も重要だったね。時系列で撮っていたわけではなかったから、脚本を何度も読み込んで、映画の全体像をきちんと把握しておかなければいけなかった。具体的な役作りの部分で言うと、トーマスは読書家という設定があったから、レイモンド・カーヴァーやアメリカのフィクション系の作家の本を僕自身も実際にたくさん読んでいたよ。そうやって作家を目指している人のメンタリティーを身につけて、なるべく一人で過ごす時間を多くするようにしていたね。

ーー着ている服やメガネ姿などルックス面からも役作りのこだわりを感じました。

ターナー:まさにその通りだね。事前にマークが衣装担当のアン(・ロス)に「こういう感じ」というアイデアを出していたんだけれど、ここでもマークは非常にオープンで、僕とアン、撮影監督のスチュアート(・ドライバーグ)たちで話し合う機会もくれたんだ。アンからは「トーマスとしてエッセイを書いてみてほしい」と言われたから、実際に書いてそれを彼女に渡したんだ。アンはそのエッセイに基づいていろいろな衣装を選んでくれて、僕たちは4時間ほどかけて最終的にどんな衣装にするかを決めていった。面白いのは、映画の中で僕が実際に着ているジャケットは、作家の息子がいる衣装部のスタッフのものなんだ。そうやって信憑性を持たせながら、みんなでトーマスというキャラクターを作り上げていったと言えるね。

ーー映画の中で最も印象的だったのは、ジェフ・ブリッジス演じるW・F・ジェラルドとトーマスとの関係性です。とりわけ終盤のバーでのシーンには思わず涙してしまいました。

ターナー:ありがとう。そう言ってもらえてうれしいよ。ジェフは僕にとって神に近い存在なんだ。彼を超える人はいないというぐらい、役者として本当に素晴らしい。そんなジェフと一対一で演じる機会をもらえるなんて、学校などで演技を学んでいない僕からしたら本当に学びの瞬間で、1秒たりとも無駄にせずに全てを吸収したいという思いだったんだ。この作品での彼のナレーションを聞いたら分かると思うけど、すごく自由で、どんどん自分の可能性を広げようとしている。ジェフは人間としても美しい人で、「これが正しい」とか「これは間違っている」ということを決めつけずに、自らも楽しむような遊び心を持って役に臨んでいるんだ。

ーー彼から学んだ最も大きなことは何でしょう?

ターナー:“ナーバスになってしまうことにどう対処したらいいか”ということだね。ジェフみたいな偉大な役者でも、意外なことに現場でナーバスになる瞬間があるんだ。40年のキャリアがある彼が今でもそうやって苦労しているんだったら、まだ5年しかキャリアのない僕がナーバスになってしまうことを避けようなんて考え方はしてはいけないと思った。ナーバスになることを受けて入れて、うまく折り合いをつけていくことが大事だと気付かされたよ。