真面目な健太郎とユーモラスな矢本悠馬 『仰げば尊し』で存在感示す、若手俳優2人の「個性」

 現在放送中のドラマ『仰げば尊し』(TBS系)には、注目若手俳優が多数出演している。その中でも目立つのは、村上虹郎ら演じる不良グループの5人と、石井杏奈演じる吹奏楽部の部長である有馬渚だろう。だが、初期から吹奏楽部に所属している2人ーーサックス担当の井川宏達役を演じる健太郎とホルン担当の古庄芳喜役を演じる矢本悠馬もまた、物語に“いい味”を加えており、見逃せない存在だ。

 8月7日に放送された第4話では、健太郎演じる井川宏達を軸に物語が展開された。2年生の井川宏達は、吹奏楽部の名門である明宝高校の受験に失敗した過去を持ち、父親には「部活なんかやっていないで勉強に専念しなさい。今度受験に失敗したら一生負け犬だぞ」とたしなめられる。さらに、中学時代の同級生が所属する明宝高校の吹奏楽部と同じ場所で合宿することになり、焦燥感や劣等感などから、どんどん心の余裕がなくなり空回りしていく様が描かれていた。

 健太郎は1997年生まれの現在19歳という、役柄に近い年齢と、爽やかなルックスで吹奏楽部の一員として違和感なく溶け込んでいる。また、映画『俺物語!!』に出演した際のインタビューで「自分も目つきひとつで表情を変えられるような役者になりたい」(引用:映画.com/俳優・健太郎、銀幕デビュー作「俺物語!!」で経験した“悔しさ”と“刺激” を明かす)と話しているように、目を含めた表情の細やかな変化で、心情を見事に表現しているのだ。高校生らしい豊かな感情を自然に顔で語っている。

 矢本悠馬演じる古庄芳喜はそこまで出番は多くないが、少ない登場シーンでもしっかりと存在感を示す、コミカルなキャラクターを違和感なく演じている。また、個性的なマッシュルームヘアも相まってか、セリフがない場面でも目をひくのだ。

 矢本は25歳にして芸歴13年という経歴の持ち主であり、“若き名バイプレイヤー”と呼べるほど演技力が高い。主演を務めることは少ないが、助演として作品をしっかりと支え、物語に奥行きを与えるのだ。2014年に放送されたドラマ『水球ヤンキース』で、宮口幸喜役を演じた際のインタビューでは「顔であったり動きであったり、台詞の音も変化させてやっているので、細かいところですけど、そういうところも見てもらいたいです」(引用:『水球ヤンキース』公式サイトより)と語っている。ディティールにまで意識を注ぎ、手を抜かず演じきる姿勢は、『仰げば尊し』でもしっかりと見受けられる。

 健太郎は、雑誌・広告を中心にモデルとして活躍し、2014年に放送されたドラマ『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』(フジテレビ系)で本格的に役者デビューと、まだ日が浅い。一方の矢本は、2003年に公開された映画『ぼくんち』で子役としてデビューを果たし、着々とキャリアを積み重ねていった。本ドラマにおいての役柄も真面目とユーモラスという対象的な2人だが、だからこそお互いに存在感を高め合い、作品にメリハリを与えている。

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