信心深い村では結婚もままならない? ノスタルジー感じる“因習村”物語『対幻想』

 村の信仰が生む「共同幻想」に立ち向かう――。漫画『対幻想』は、因習村を舞台に男女が支えあいながら村を縛る思い込みと対峙する物語だ。

 民俗学の用語をタイトルに冠した本作の根にあるのは、「"因習村"という構造自体が、差別から始まっている」という作者・のうきさん(@dream_kaburaya)の着想。不穏な世界観のなかにノスタルジーを漂わせた本作について話を聞いた。 (小池直也)

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『対幻想』(のうき)

――まずはタイトルの由来を教えてください。

のうき:民俗学的な思想としての「対幻想」から引用したものです。因習村の信仰対象である「かいらさま」を信じる村の「共同幻想」から美樹と富太郎はお互いに支え合う「対幻想」的な姿で自分たちを守り、道を切り開く。といった意味が込められています。

 この意味自体が分からなくても「対幻想」の不穏なタイトルと因習村、そしてラストのお互いを信じる「対の幻想」を感じ取っていただければありがたいです。

——本作の着想や制作のきっかけは?

のうき:着想は「『因習村』という構造自体が差別から始まる構造だよな」と感じたところですかね。当時SNSで因習村が流行っていたのもあり、それ関連の話を描きたかったのですが、その構造としての差別についても興味を持ちました。実際、作中では3度ほど、差別と明確に示されてなくても「思い込みを解消する」という物語が形を変えて描かれていると思います。

——村について、細かく設定してから描いていったのでしょうか。

のうき:設定は結構流動しましたね。初めはありがちな、美樹と富太郎が村の悪い因習に負ける流れを描きたかったのですが、ふたりが思ったより弱くなかったので……。

 彼らが物語のなかで少しずつ強くなって、それと引っ張られる形で村のなかも当初より少し優しい方向に変わっていきました。そして実際この話のなかでは、ふたりが「戦う」とは別の形で様々な困難に立ち向かっていると思います。

——制作での苦労などがあれば知りたいです。

のうき:秋と珠音の存在ですね。民俗学者として村を調査しに来るのですが、あまりに美樹と富太郎が強いので彼らが必要なのかな、と思ってしまって……。

 でも美樹と富太郎、そして村で起きたことを「見守る」役目が必要だと思ったので、そのまま居てもらいました。秋と珠音がいたからこそ、美樹と富太郎は強さを存分に発揮できたのではないかと感じています。

——キャラクターデザインでイメージしたものはありますか? 

のうき:富太郎に関してはできる限り普通の見た目をした青年。逆に美樹は少し外れた女性として描きました。銀髪であったり社交的すぎる姿がそうですね。富太郎は村の代々続いた家系として、美樹は途中で流入してきた家系としてというイメージです。

——ハッシュタグ「#絵柄が好みって人にフォローされたい」も付けていましたが、作画のこだわりも気になります。

のうき:絵柄は因習村であっても、怖さより寂しさとかノスタルジーを感じさせるものを目指しました。この物語の主軸である「かいらさま」の感情に沿ったイメージですね。同じ雰囲気が好きな方に届いたら嬉しいです。

——お気に入りのシーンは?

のうき:見開きにした花火のシーンですね。あのシーンは富太郎と美樹の解放であり、新たな道への一歩。明言はしてませんが、かいらさまがそれを後ろから見守るシーンでもあります。結婚の儀式の前に、鬱蒼とした木々と晴れやかな花火で真に解放されたということを明確にしたかったので、それを綺麗に描けた場面でした。

——毎日投稿を続ける秘訣は?

のうき:好きなように描くことですね。まだまだ技術は未熟ですが、それでも「描いてて楽しい!」を信じてずっと描いています。あとは単純に絵そのものより物語が好きなので。「この物語の続きを見たい」という気持ちで続けられている部分もあると思います。

——今後の展望を教えてください。

のうき:自分の世界を精いっぱい描き切ることですかね。私のなかには大きな世界が広がっていて、それを皆さんに見てもらい、自分でも体感する。このふたつができるように日々描き続けています。

 今回の『対幻想』もそのひとつだし、現在は同じ世界線のSF長編『パラマジック』を準備中で、来年1月から公開予定です。ぜひこれらの作品をきっかけに、この世界の広さを体感してもらえたら嬉しいです。

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