学校では“みんなと同じ”が大切? 学生の息苦しさと友情を描いた漫画『四角い水槽』
“教室はまるで水槽の中/キラキラ泳ぐ魚の群れ”
教室を「水槽」、生徒を「魚」に見立てたメタファーから始まる漫画『四角い水槽』。前述したモノローグには続きがある。“息を止めて潜っていく(中略)人と一緒にいるには/「同じ」ことが大切/だって…/「同じ」でいなきゃ/違うと嫌われる/ひとりになっちゃう”。そんな思いを抱く女子生徒・藤原綾乃の目線の先には、いつも1人で漫画を描く同級生・山田の姿があった。
黙々と漫画と向き合う山田と、彼女と友だちになりたいと願う藤原。果たして2人は距離を縮めることができるのかーー。本作の作者・くしまさん(@kushima_ksm)に創作のきっかけ、藤原と山田を描くなかで意識したことなど、話を聞いた。(あんどうまこと)
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ーー本作を創作したきっかけを教えてください。
くしま:もともと『丸い星空』という読切漫画を描いていて、その作品の主人公こそ山田でした。そのため本作『四角い水槽』は山田と藤原さんのスピンオフ的な物語なんです。数年前に、学生時代の漫画研究部の友達と久しぶりに集まって「みんなで1冊の本を作ろう」ということになり、同窓会をテーマに描いたのが『丸い星空』でした。
山田視点のお話とともに藤原視点の読切漫画も描きたかったものの、ずっと描けないままになっていて。ただ「コミティア」(一次創作の同人誌即売会)に参加するにあたって、当時は描けなかった藤原視点の話として描き上げたのが『四角い水槽』です。
ーー『丸い星空』は『四角い水槽』と対照的に、山田が主人公として描かれつつ、藤原さんは校内で一目置かれる存在として描かれています。
くしま:『丸い星空』では、何でもできる藤原さんを「高嶺の花」として描いていましたが、本作では机に向かって黙々と漫画を描き続ける山田の姿が、藤原の目を通して憧れの対象として映し出されます。
私自身、作品を生み出している人の背中にかっこよさを感じていて。机に座って無心で描いている背中にこそ、喜びも悲しみも、苦しみも輝きも、全部詰まっていると思うんです。抱えた思いを語らずに作品に全てを込める姿勢こそが、クリエイターとして一番かっこいい姿だと思っています。そんなクリエイターのオーラのようなものを描きたいと思いながら山田を描きました。
ーータイトルにもある「水槽」というモチーフを選んだ背景は?
くしま:正直、山田は絵があまり上手ではなく「井の中の蛙」のような存在でした。ただ才能に恵まれているように見える藤原さんもまた、実はガラス張りの「四角い水槽」という牢獄の中で苦しんでいる。周りから色々なことを期待されて、うまくやっていける器用さがあっても、それが本人にとって快適かどうかは別なんですよね。
私自身、幼い頃に水泳教室に通っていたのですが、息継ぎが苦手で。藤原さんは息を止めて泳ぎ続けているかのような、息苦しさを抱えている。そんな心情を「水槽」というモチーフに重ねて本作を描きました。
ーーくしまさん自身が漫画を描き始め、現在のようにSNSで作品を発表するようになった経緯を教えてください。
くしま:小学生の時、友達とノートで交換日記をしながら、漫画やイラストを描いて見せ合ったのが原点です。そのあとも漫画研究会などで友達と見せ合いながら作品を描いていたのですが、社会人になって漫画を描くことをやめてしまってたんです。その後、漫画研究会のメンバーで本をつくることになって「あのとき描けなかった心残りに挑戦してみよう」と思い漫画制作を再開しました。
2020年頃からはSNSに作品を投稿し始めて、2025年からは漫画を1冊の本にまとめてコミティアに参加するようになりました。
ーーくしまさんが漫画を描き続けるモチベーションは?
くしま:正直、漫画を描いていない方が生活は充実するんです(笑)。部屋の掃除もはかどるし、旅行にも行ける。でも何か面白いことや感情の動きがあった時に、頭の中で勝手にお話を考えたり、コマ割りをしてしまうんですよね。
漫画を描いている時間は過酷ですけれど、やっぱり自分が大好きな漫画を通して、読んだ人の心が動いたり、楽しんでくれたりする瞬間は何物にも代えがたい宝物なんです。「もう漫画に縛られない人生のほうがいいのかな」と思うこともありますけれど、それでも描きたくなってしまう、不思議な魅力がありますね。
ーー今後の目標を教えてください。
くしま:これからもコミティアなどの即売会に参加しながら、自分が伝えたいものが読者へちゃんと伝わるように、もっと作品を描いてレベルアップを図っていきたいです。