漫画『友達に不幸になってほしくはないけど、自分より幸せにはならないでほしい』

――本作はどのように制作されたのでしょうか。

大場玲耶（以下、大場）：今まで雑誌の連載で描いたのは、明るくてコミカルなものばかりでした。でも個人的には、コンプレックスや劣等感といった黒い感情が好きなので、そういった作品にウェブで挑戦した感じです。

――それはいわゆる中二病的なセンスということ？

大場：そうかもしれません。垣間見える闇とか、コンプレックスを持つ人に萌えを感じがちで（笑）。きっかけはゲーム『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』の主人公だった気がします。生い立ちもそうですし、結婚してからも散々じゃないですか。彼がどんな気持ちで人生を歩んでいくのかと考えたのが始まりだったのかなと。

――描きあげた今思うことは？

大場：作風が今までと全然違うので、結構な冒険でした。こんなエピソードを足せばよかったなという反省もあるものの、「言語化しづらいことを漫画に落とし込んでいる」という反響もあり、刺さる人には刺さってくれたと安心しました。

　物語はフィクションがベースですが、登場する女の子ふたりの、どちらの立場にも自分が感じたことのある要素を入れています。どちらも理解できないと書けないかなと思ったんですよね。また片割れの葵ちゃんが漫画家を目指す必要性はないのですが、デビューするまでの工程を知っている分だけリアリティを出せるかなと思ったんです。

――絵柄と複雑な感情のミスマッチがまた作品の魅力でもあります。

大場：アニメ『魔法少女まどか☆マギカ』やゲーム『ひぐらしのなく頃に』をはじめとした、絵柄と内容が違う作品も好きなんですよ。「絵と内容を一致させなきゃいけない」という考えを変えた2作品だったのかなと。もともと私は4コマ漫画出身なので明るい話を描く絵でしたが、暗い話を描くのに別に絵柄を変える必要もない、むしろそれが魅力になることもある、と当時思えたのが今回の挑戦の支えになりました。

――こういった作品を今後も作りたいですか。

大場：漫画において感情をどこまで表現できるかは腕の見せどころであり、個人的に描いていて一番楽しいところなので、本作のような作品はこれからも描きたいですね。それから今は、自分が本当に好きな作品は何かを洗い出すように描く武者修行中なんですよ。これまで通り、明るいラブコメなども描いていくので、そちらも楽しんでいただければ。またAmazonで電子書籍を出したり、どこまで個人クリエイターとして活動できるかも探っていきたいです。