VTuberの絵文字・推しマークのルーツをたどる 少ない文字数で「好き」を表現する便利な文化はどこから来た?

絵文字・推しマークの利点と注意点

 絵文字・推しマークを制定するのは、決して「VTuberがしなければならないこと」というわけではない。なんらかの考えがあってあえて付けていない、あるいは特に意識していないVTuberも数多くいるだろう。

 ただ、VTuberシーンの文化や推し活の面から見れば、あると便利なものだというのは間違いない。利点をいくつかあげてみよう。

 ひとつは、「自己を表現する記号」になるという部分だ。VTuberはキャラクター性や背景が非常に重要なファクターになっている。それを1から3文字程度の短い絵文字の羅列で表現できる、というのは画期的だ。

 たとえばときのそらは、クマの絵文字とCDの絵文字を組み合わせた「🐻💿」というマークを使っている。クマは彼女のマスコットキャラクター的存在であるクマのぬいぐるみ「あん肝」を表現し、CDは自身のデビューアルバムを指している。このことから2文字だけで「マスコットキャラが居る」「音楽活動に打ち込んでいる」という彼女の活動スタイルを伝えることができるのだ。(ちなみに、クマだけだとにじさんじ・森中花咲の、CDだけだと個人勢・春日部つくしの絵文字・推しマークになる)。

 ふたつめは、「SNSでの使いやすさ」だろう。特にX等の場合、自分のポストに絵文字を添えるだけでも、自分の発言であるというアピールが簡単にできる。自分の名前がわりにさらっと個性を付け加えたい場合に、短く、キャッチーに演出できるため、とても便利だ。

 みっつめは「ファンの旗印になる」という点だ。推しネームをSNSの名前の後ろに付ける人もいるが、これを絵文字に置き換えると1から3文字で自分の推しをPRできる。最初にも述べたように、複数の推しがいる場合は複数のマークを掲げてみたり、あるいは自分のプロフィール欄に大量に並べて「この人たちをよく見ているよ」という挨拶代わりにすることも可能だ。

 大切なことだが、ファンマークは付けなければいけない、という類のものではもちろんない。あくまでも自主的に、付けたければ付ければいいというものなので、「付けていないからファンではない」ということにはならない。

 それから、絵文字・推しマークは便利な部分が多いと同時に、注意しなければいけない点もいくつかある。

 まず絵文字自体がデバイス、アプリ、媒体によって表示が異なるという部分だ。たとえば前述した「うさぎ」の絵文字は、WEBブラウザと、Wordやテキストファイルとでは表示がまったく異なる。またiPhoneやMacと、WindowsやAndroidでも表示が異なる。しかし、文字コード上はいずれも同じ「うさぎ」の絵文字として扱われている。絵面で覚えていると、別のデバイス・OSで表示したときに見落とすこともありそうだ

 また絵文字のかぶりは、VTuber界隈の中では回避されている場合が多いものの、シーンをまたぐとかぶることが多い、というのも注意したい。アイドル、K-POP、歌い手、クリエイターなど、様々なジャンルの界隈で絵文字が推しマークとして、またSNS上で名前の検索避けを兼ねた表現として用いられることがある。そのため、VTuberの絵文字で検索すると、アイドルファンなど他界隈の投稿が引っかかることは普通に起こりうる。

 逆に、アイドルファンが推しの絵文字で検索したらVTuberの話題が引っかかった、という場合もあるはずだ。そもそもの話、VTuberの専用アイコン・マークではなく万国共通で利用できる絵文字なので、普通に使っている人も当然多い。絵文字を使った推し活はVTuberだけの文化ではなく、他界隈で使われていたり、世界各国で普遍的に使われている文字である、というのは常に念頭に入れておくほうがいいだろう。

 加えて、これは絵文字に限った話しではないが、絵文字を推しマークにして名前に付けているときは、自分が「その人の名前を背負っている/ファンであることを公言している」ということを忘れないようにもしたい。推しマークを付けたアカウントで暴言を吐いていた場合「◯◯のファンが問題を起こしている」と他の人から見られてしまうかもしれない。

 ひいてはその推しに批判が飛んでしまう可能性もゼロではない。逆にいえば、推しマークを付けて誠実な対応を心がけていれば「◯◯のファンは治安がいい」と見られることもあるだろう。やや口はばったいと思われるかもしれないが、推しマークを付けるのであれば、その推しに見合うだけの態度を普段から保つよう注意が必要になるだろう。

 活動者とファンをつなぐものとして成熟しつつある推しマークの文化は、今後増えることはあっても無くなることはまずないくらいに定着した。だからこそ、推し活で使っている絵文字が、推しに迷惑をかけることがないよう、応援のひとつのあり方として推しを喜ばせるものになるよう、うまく活用したいところだ。

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