『ブラッサム』“清治”渡部篤郎に迫る死の影 「父からの、解放」は何を意味するのか?
これまで珠(石橋静河)の人生に大きな影響を与えてきた父・清治(渡部篤郎)。NHK連続テレビ小説『ブラッサム』第9話では、嫁入り先から戻ってきた珠と、病に倒れる清治の姿が描かれた。
嫁入りして3日もたたずに家を飛び出した珠。「祝言の日から旦那さんに目も合わせてもらえんと、毎晩お出かけになられて……」と事情を話し、縁談を台無しにしてしまったことについて清治に頭を下げる。これまでの清治であれば、激しく叱られてもおかしくないだろう。ところが返ってきたのは、「分かった」という一言だけだった。
リョウ(国仲涼子)と珠は改めて清治の部屋を訪れ、なぜ怒らないのかを尋ねる。だが、その答えを聞くよりも先に、清治が突然咳き込み、胸を押さえて苦しみ始める。すぐに医者が呼ばれ、処置を受けることになるのだが、医者からは「命に関わる」と伝えられる。
清治が自分の病をどこまで分かっていたのかは、現時点では明らかになっていない。ただ、珠の縁談を急いでいたことを思えば、自分の体に起きている異変を感じていたとしても不思議ではない。娘を早く嫁がせようとしたのも、自分がいなくなった後のことまで考えていたからなのか。嫁入り先から戻ってきた珠を怒らなかったことにも、清治なりの思いがあったように見える。
清治の看病に追われる珠たちのもとには、梅(松本穂香)も滋養になる食材を持ってやって来る。「珠ちゃん、頑張ってね」と声をかける梅。一方の清治は「羽織を出せ」と言って、病床から外へ出ようとする。守(中須翔真)が体を張って止め、リョウも「きっとようなりますけん」となだめてその場は収まるが、病状は日に日に悪くなっていく。
やがて医者は、清治に酒を飲ませても構わないと告げる。それが回復の兆しではないことを知らされたのは、リョウだけだった。もう酒を止める必要もないほど、残された時間は短い。「きっとようなりますけん」と夫を励ましながら、その言葉とは反対の現実を一人だけ知っているリョウ。しかし、清治の前では希望を口にし続けなければならない。その姿もまた見ていると苦しい。
そして、珠が清治の寝床のそばでりんごを剥いていると、清治は窓の外を見つめ、「誰だ?」と一言。その視線の先にいたのは、自分自身の幻影だった。近くにあった包丁を手に取り、錯乱したまま雪の舞う外へと出ていく。珠たちがどれだけ懸命に看病を続けても、病は身体だけでなく意識にまで及び始めていたのだった。
第1週では、珠が父について書いた作文をきっかけに、二人は少しだけ距離を縮めた。清治は珠の作文を町の人たちに見せびらかし、珠もまた、初めて父に認めてもらえたことを喜んでいた。しかし、ようやく距離が近づき始めた矢先に、残された時間は急速に少なくなろうとしている。
今週のタイトルは「父からの、解放」。それは単純に清治のもとを離れるということではないのだろう。父に決められた道を歩いてきた珠が、自分自身で人生を選ぶこと。その一方で、たとえ離れたいと願った相手であっても、清治が父であることには変わりがない。解放されることと、失うことはまったく別のことだ。清治に残された時間が少なくなるほど、その言葉が持つ複雑さもまた浮かび上がってくる。
■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK