『ブラッサム』“珠”石橋静河の「やめじゃ」は尊厳の証し ジャズ風の劇伴が物語を彩る

 女学校での日常から急転直下。連続テレビ小説『ブラッサム』(NHK総合)第8話は、縁談、嫁入り、婚家からの逃げ出しと、怒涛の展開となった。

 実家から援助の打ち切りを告げられた清治(渡部篤郎)が持ってきたのは、珠(石橋静河)の従兄・木村享一(小堀正博)の縁談だった。生活費を工面しなければならない清治にとって、珠の実母の妹である照子(山田真歩)からの申し出は、願ってもないものだっただろう。

 女学校でおこなわれる良妻賢母教育。家に尽くす母・リョウ(国仲涼子)の存在。珠は、女として生まれたがゆえの人生を受け入れ、そこに幸せを見いだそうと、結婚を決める。

 ただ、忍(木竜麻生)には本心がバレていたようだ。忍が指摘するように、清治に逆らえず、縁談を受け入れたのは事実だろう。忍は、成績優秀で文才のある珠が家庭におさまってしまうことが許せないのだろう。第6話、第7話で、珠を引っ張り上げるような強く優しい芝居を見せてくれた木竜。珠を叱責する鋭い声色に、忍の反骨心が垣間見えた。

 リョウに「珠さまならうもうやれる」と背中を押され、婚家へと嫁入りした珠。リョウが「幸せになって」ではなく、「辛抱するんよ」と声をかけたことが切ないが……。リョウは、簡単ではない結婚生活が待ち受けていることを予感していたのだろう。

 案の定、祝言のあと享一は珠を見向きもせずにどこかへ行ってしまう。珠をじっと見た上で、「いらん」という言葉を残して。珠は慣れない婚家で、来る日も来る日も一人で寝起きする。拠り所のない生活のなか、珠の頭の中には「いらん」という言葉が響き続けていた。

 享一の弟・保(金子大地)から明かされたのは、兄が色街通いをしている事実。照子はそれをやめさせるために、息子の意思を無視して縁談を進めていたのだ。珠の縁談は、清治にとっても照子にとっても、それぞれの都合を通すためのものだった。

 自分の結婚に隠されていた事情、とりつく島もない享一の態度、「いらん」という存在の拒絶。珠は「はあええ、やめじゃ」と木村家を飛び出してしまう。

 リョウから辛抱するように言われた珠だったが、彼女は悩み抜いた末、自分の尊厳を守るためなら「もうええ」と走り出せる人物なのだ。忍は、珠の心にある負けん気を見抜いていたのだろう。

 印象的だったのは、走り出す珠を後押しするかのように流れた疾走感のあるジャズ調の劇伴だ。第8話の最後に流れた曲は、第5話で珠が清治に歯向かうシーンでも流れていた。自分の意思で走り出す珠のテーマ曲なのかもしれない。

 本作の音楽は、『カルテット』(TBS系)や『ブラッシュアップライフ』(日本テレビ系)などの音楽も手がけたfox capture planが担当している。ジャズを基調としたいい意味で朝ドラらしくない楽曲が、珠の人生をどのように彩っていくのか楽しみだ。

■放送情報
2026年度後期 連続テレビ小説『ブラッサム』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜から金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:石橋静河、加賀まりこ、松たか子、国仲涼子、渡部篤郎ほか
作:櫻井剛、小松與志子
主題歌:YOASOBI
制作統括:村山峻平、櫻井壮一
プロデューサー:大野陽平
演出:盆子原誠、中泉慧、佐藤玲衣、田中陽児、小林直毅、野田雄介
写真提供=NHK

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