黒木華×野呂佳代のシスターフッドに涙 『銀河の一票』が照らす“一票”の重み

 生まれて初めて選挙に行ったときの不思議な高揚感を、いまだに覚えている。投票用紙を受け取るときのドキドキ感や、“あの”鉛筆の手触り。あの瞬間、たしかに「ああ、わたしはこの国の一員なんだな」と思うことができた。でも、あれから十数年が経ったいまでは、一票を投じることにも慣れてきて、「この一票で、何かが変わるのだろうか?」と思うことも増えてきた。

 そんなとき、“一票の重み”を思い出すきっかけをくれたのが、『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)だった。

 本作は、政界を追い出された主人公・星野茉莉(黒木華)が、“政治参謀”として政治素人のスナックのママ・月岡あかり(野呂佳代)をスカウトし、都知事選に挑む……という選挙エンターテインメント。プロデュースを務めるのが、『エルピス―希望、あるいは災い―』(カンテレ・フジテレビ系)を生み出した佐野亜裕美ということもあり、放送開始前から期待値が爆上がりしていたのだが、初回からそのハードルを軽々と飛び越えてくるおもしろさがあった。

 まず、茉莉とあかりの“シスターフッド”に、初回から涙が止まらなかった。2人は、「学生時代からずっと友達でした~」などというわけではない。ただ、茉莉の(おそらく)人生最悪の日に、出会ったのがあかりだった――それだけのこと。なのに、茉莉はあかりに惹きつけられ、あかりもその期待に応えるように、だんだんと心を許していく。疑い深いわたしは、「会ったばかりの人のことを、いきなり信じて大丈夫?」とも思ったが、あかりを演じているのが野呂佳代だからだろうか。「たしかに、信じちゃいたくなるよなぁ……」といつの間にか納得している自分がいた。

 とくに印象的だったのが、第1話で茉莉が「影響ないですよね? わたしが死んでも、あなたの人生には」と言ったときの、あかりの返事だ。

「そんなわけないでしょ! 大だよ! 影響大! 言ってたじゃん、さっき。世界がぜんたい幸福にならないうちは、個人の幸福はあり得ないって。あなただって、世界の一部でしょ? わたしが幸せでいるために、あなたにも幸せでいてもらわないと」

 「“わたしが”幸せでいるために、あなたに幸せでいてもらわないと」と、“Iメッセージ”を用いて気持ちを伝えてくれるからこそ、押し付けがましさとは無縁で、驚くほど自然にスッと心に溶け込んでくる。だからこそ、茉莉も心を動かされたのだろう。一度どん底まで落ちた経験があるからこそ、あかりの明るさは温かい。 

 あかりが言うように、幸せな社会を作るためには、まずは“わたし”が幸せにならなければならない。それができたら、次は隣の“あなた”を幸せにする。そんな小さな連鎖が続いていけば、社会はより良いものになっていく……のかもしれない。一票の存在も、きっと同じだ。ただの一票に見えるけれど、その向こう側には無数の人生が広がっている。自分ひとりの声じゃ、社会は変わらない……なんて思うこともあるけれど、裏を返せば、その声がなければ変わらない未来も、たしかにある。

 本作のプロデューサー・佐野亜裕美は、「このドラマの放送後に投票率を0.1%でも上げることを目標に掲げている」という。(※)0.1%――それは、“たったひとり”の意識の変化が積み重なった数字でもある。誰かの「行ってみようかな」が重なったとき、社会はほんの少し、でもたしかに動き出す。このドラマは、そんな一歩が生まれる瞬間を、そっと照らしてくれる作品になるのだろう。

参照
https://realsound.jp/movie/2026/02/post-2303551.html

■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/ginganoippyou/
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