【漫画】異世界でも“G”は人類の脅威? 『Gの女神』作者・岩田和久が美醜と理不尽を描くワケ
「1匹いたら100匹いると思え!!」ーー幼馴染の守、その妻・美桜とともに異世界に転生してしまった九頭川花(くずかわはな)。3人のなかで唯一能力を持たずに転生し、かつ“汚く醜い”とまで言われた彼女は、「G」の狩場に置き去りにされてしまうが……。
児童漫画から、夜の世界に生きる手配師を描いた『女衒』(原作:倉科遼/芳文社)、「外見」に焦点を当てた『ブス、逆襲するってよ ~ルサンチマンの女~』(小学館)など、40年以上にわたり作品を作り続けてきた漫画家の岩田和久。彼の新作は初の“異世界転生”作品となる『Gの女神~異世界転生したら美醜逆転ゴブリンに絶世の美女扱いされました~』だ。
今回は岩田に、本作の創作に至った経緯や込めたテーマについてなどについて、話を聞く。
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ーー本作は、「自分とは絶対に無縁と思っていた異世界転生もの」だそうですね。そんな本作の創作に至った経緯を教えてください。
岩田和久(以下、岩田):前の連載が終了したタイミングで、次の作品を考えていたんですけど、5つくらいあったのがすべてボツになってしまいまして。じゃあ何を描こうかと考えていたときに、担当編集者から「女性の外見をテーマにする作品を描いてきた経験を活かしては」という旨のアドバイスをもらったんです。
そこで思い出したのが、私が以前描いていた『ブス、逆襲するってよ』の「醜い顔を憂いて飛び込み自殺をした女性が異世界に転生する」というワンシーンでした。女性が転生した先は美醜が逆転した世界で、女性は美人としてチヤホヤされる……。といった展開なのですが、その話をしたら担当編集者に良いと言ってもらえて、物語を考え始めました。
ただ、元々はリアルな社会で美醜が逆転する物語を考えていたんですけど、担当編集者のアイディアもあって、ファンタジーな異世界転生作品になったんです。
ーー登場するゴブリンを、現実世界のゴキブリにリンクさせていますよね。
岩田:ゴキブリって、人間から無条件に嫌われている存在じゃないですか。見たら深いことを考えず、とにかく始末する。ああいう感覚って、極端に言うと人間が人の外見を判別することにも近いと思っているんです。遺伝子レベルなのか、やっぱり人は美人やイケメンに憧れや好意を抱くことが多いじゃないですか。このある意味理不尽な嫌悪の向け方を表現するため、ゴブリンを無条件で人間から嫌われるゴキブリと重ね合わせているという意図があります。本作でもメインテーマとして取り扱っていますが、こういった外見からのイメージとか遺伝子レベルの理不尽な判別は、私が漫画を描くうえでの重要なテーマの1つかなと思っています。
ーー初挑戦となる「異世界転生もの」ならではの難しさを感じる部分はありますか?
岩田:テンポを速くすることはとても意識しています。時代的にもジャンル的にも、少しつまらないとすぐ読むのをやめるような感覚で読んでいる方が多いかと思いますので、担当編集者とも「テンポの速さはすごく重要だよね」と話をしたのを覚えています。雑誌掲載の漫画ではなく、すぐに読むのをやめることができるWeb漫画なのもあって、それこそSNSのショート動画のような感覚で読んでいただいている方が多いのかなと思っています。
最近では女性向けの漫画を多く描いていたんですけど、元々私は「コロコロコミック」出身なんです。テンポ感とかどんどんエピソードを重ねていく物語作りとか、「これ『コロコロ』の手法だな」と思いながら描いていますね。
ーー40年を超えるキャリアのなかで、時代に合わせるのが大変だと感じることはありますか?
岩田:描くジャンルの変化が大きいですね。最初は「コロコロコミック」(児童漫画)から始まり、そこから少年漫画に移って、青年漫画に移って、10年ほど前からは「美醜」をテーマにした女性向けの漫画を描くようになりました。やっぱり40年もやっていると全然違うジャンルに変わることもあり、その変化に頭を使うことはあります。
ーー女性向けの漫画を描き始めたことに何かきっかけはありましたか?
岩田:10年以上前に、美容外科のお医者さんとたまたま会う機会がありまして。そこでその方から、「漫画のテーマに美容整形はどうですか」というお話をいただいたんです。正直最初は興味がなかったんですけど、お医者さんの視点からの注意点とか患者さんの傾向とか、そういったお話を聞いていたら少しずつ興味が湧いてきました。そして、ではやってみましょうかと1作目を描き始めて、そこから「美醜」をテーマにした作品を多く描いています。
ーー人との会話から作品の着想を得ることが多いのでしょうか?
岩田:人との会話でもそうですし、音楽やドラマなんかからもアイディアが湧いてくることはあります。ドラマを見てたら途中から上の空になって、続きを自分で考え始めて……なんてこともありますね。漫画家さんは結構そういう方は多いと思います。あとウォーキングをするので、途中の風景を見て、思いついたことをベンチに座ってメモするなんてこともしょっちゅうやっています。
コロナの影響で人と話すことが減ったのは、時代の変化を少し感じました。やっぱりリモートとかで話すときは、「雑談」ってあまりしないじゃないですか。どうでもいい話の延長から生まれるモノが昔はあったので、それは減ってしまったかなと思いますね。ただその分いろんなエンタメはどんどん増えているので、作品から何かを思いつくというのは今でも変わらないです。
ーー最後に本作の今後の展望、また岩田氏ご自身の漫画家としての目標を教えてください。
岩田:全体的には人間と魔物たち、ゴブリンたちが戦ったりとか共存したりとか、そこのストーリーをしっかり描いていきたいなと思っています。
ただ、かなり行き当たりばったりで描いている部分もあるんです。キャラクターがどんどん増えると「こういう話もできるな、ああいう話もできるな」と、どうしても長くなってしまいます。やっぱり、全部を一度に思いつくわけではありません。都度色々な思いつきがあり、その思いつきを大事にしていきたいので、その場その場で頭に浮かんだことも描いていきたいんです。でも最終的には、しっかりと人間とゴブリンの物語を描き切りたいです。
漫画家としては、自分が描きたいなというアイディアを、今後も形にしていければいいなと思っています。
■作品情報
『Gの女神~異世界転生したら美醜逆転ゴブリンに絶世の美女扱いされました~』
「DMMブックス」で先行配信中
著者:岩田和久
出版社:CLLENN
作品ページ:https://book.dmm.com/product/6289210/s539ahuat07753/