もはやポケモンは「おもしろいゲーム」というより、キャラの魅力に頼りきった「キャラゲー」なのか

ポケモンは「キャラゲー」なのか?

 2022年11月18日に発売された「ポケットモンスター」シリーズ最新作、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が大きな人気を博している。

 本作は発売後3日間で1000万本(うち国内販売本数405万本)の売上を突破しており、これはNintendo Switchを含むすべての任天堂のゲーム専用機向けソフトにおける過去最高記録となっている。

 もともとポケモンは人気のあるタイトルだが、最高のスタートダッシュをきれているし、今回は広大な世界を自由に冒険できる「オープンワールド」形式になっており、ユーザーからの期待も大きかった。

 しかし、素晴らしい出足とは裏腹に、作品内容に対する否定的な意見も少なくない。本作はさまざまな問題を抱えており、それによって「もしかすると、ポケモンは“つまらないゲーム”でもいいのではないか?」という疑問が浮かんでしまっている。

問題が噴出し、評価も落ちてしまったポケモン最新作

画像は任天堂公式サイトより

 さまざまなサイトのレビューを集積し、メタスコア(平均点のようなもの)を公開しているMetacriticにおいて、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』の点数は100点中74点となっている(記事執筆時点)。

 これはあまり芳しくない評価だ。以前の作品より一回り点数が落ちているし、複数のレビューにおいてゲームの動作に問題があると指摘されており、それゆえに評価も落ち込んでしまっている。

 具体的にはフレームレート(※)がかなりの頻度で低下したり、エラー落ちでゲームが強制終了してしまう点が問題だ。バグもかなり多く、Twitterではしょっちゅう話題になっている。

(※)フレームレート:ビデオゲームは1秒の間に30~60程度の静止画を連続で表示して動画を見せている。このフレームレートが高いとより高品質な映像になり、低いとストレスが生まれやすい問題がある映像になってしまう。

 はっきりいってオープンワールドRPGとしての品質には疑問で、筆者はIGN JAPANでその点に関する問題をまとめた記事を書いた。しかし、それでも楽しめる人もいるし、筆者も一部をおもしろく感じたのは事実だ。

 なぜそう思うのだろうか? 答えはシンプルで、ほかの部分に問題はあっても、魅力的なポケモンやキャラクターがいるのは事実だからだ。ポケモンやそれに関連するキャラクターが出てくるのは「ポケットモンスター」シリーズだけであり、それが本当に強いのである。

 しかしそれは、ポケモンがいわゆる「キャラゲー」だという証左になってしまうのではないか。

もしかすると、ポケモンは「キャラゲー」なのではないかという疑念

画像は任天堂公式サイトより

 「キャラゲー」とは、キャラクターの魅力に頼りきり、ゲーム内容が二の次となっている作品を指す。否定的な意味合いを含み、ともすれば侮辱的な言葉ですらある(別の意味で使われる場合もあるが、本記事ではこの定義で進めていく)。

 「特定のメーカーのキャラゲーはおもしろくない」としばしば言われることがあるように、実際キャラクターの魅力に頼りきりの不出来なゲームは存在する。なぜそうなるのかといえば、そのキャラクターが出ればファンは多少不出来だったとしても、ゲームを買ってくれるからだ。

 実際、制作上の観点からもキャラゲーにおいてはキャラクター描写を重要視する必要がある。ユーザーはそのキャラクターや世界設定のファンなのだから、それをもっとも重視するのが正解のひとつなのは、疑いようもない。

 『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』はさまざまな問題があるうえ、オープンワールドをほとんどうまく活かせていない。しかし、パルデア地方で新たに出会うポケモンは魅力的だし、今回は特に人間キャラクターもよく描けている。

 こうなると、「ゲームとして大しておもしろくなくとも、ポケモンやキャラクターがよければそれでいいのではないか」と考えるのも無理はないだろう。これがキャラゲー的な評価である。

画像は任天堂公式サイトより

 実際、「ポケットモンスター」というフランチャイズにおいて、キャラクターの存在感は大きい。それこそポケモンを遊んだことがない人でも、ピカチュウは知っているだろう。

 ポケモンはアニメ展開やリアルイベントなども積極的に繰り広げているし、飛行機や自動販売機にだって描かれている。カードゲームのカードは奪い合いになるほどだし、関連のおもちゃも山ほどある。Twitterで検索すれば人間キャラの二次創作がわんさか出てくるように、ゲームを遊ばない人ですらキャラクターに興味をもてるわけだ。

 もはや、ゲームが不出来だとしても受け入れられる土壌ができているのではないか、とすら考えてしまう。つまり、「ゲームはポケモンという巨大IPにおけるひとつの要素でしかない」のかもしれない。ならば、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』が不出来だとしても問題ないのでは?

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