車検をギリギリ通過するレーシングカーを普段使い 不便を楽しむ車系YouTuberがすごい

 レーシングドライバーであり、自動車デザイナーであったコーリンチャップマンが「車は軽ければ軽いだけ運動性能が上がる」という思想の元開発されたのが今回の動画のメインとなるスーパーセブンである。

 公道を走れるレーシングカーをコンセプトとしているこの車両はシンプルイズザベストを体現しており、まるでクラシックフォーミュラカーに最低限の保安部品を付けたような外観だ。1957年発表以来今日に至るまで進化し続けてきているロングセラー車種でもあり、現在はロータスから引き継いでケーターハムから発売され、その他メーカーからもレプリカが売られている。レプリカなどを含めセブンのコンセプトデザインを持つ車の総称がスーパーセブンである。

レーシングカーを普段使いするという意味

 公道を走れるものの、以上のような特殊な車のため普段使いするには難しいとされているが、今回紹介する「スーパーセブン みぞ」は、なんと普段の生活でバリバリ、スーパーセブンを乗りこなしている様子をアップしているYouTubeチャンネルだ。

雨だから駅まで送って!と言ったらスーパーセブンで迎えに来られた幼馴染

 たとえば、雨の中で幼馴染を駅まで送るとしよう。まず荷物を置く場所はトランクではなくシート後ろの「ちょっとしたスペース」である。スーツケースがギリギリ一個入らないかどうかというサイズであり、蓋をするのは布のようなカバーだけだ。

 そして助手席への入り方も一工夫。足から入るのはレーシングカーにはよくあるスタイルだが、乗降の多い普段使いでは一種のアスレチック運動のよう。さらにこの車は排気管(マフラー)が助手席脇にセットされているため、やけどにも気をつけなければいけない。シートベルトもレースに使うような中央ロックの多点式だ。

 窓や雨を防ぐ頭上の幌はあるものの基本的に人を覆うのはシャーシくらいであるため、エンジン音がほぼダイレクトに搭乗者に伝わる。クルマ好きからすれば最高のBGMだろうが一般的に考えれば異常なほどのノイズだろう。

 そしてどうやら気密性は無いらしく、ズボンは外からの雨水が入り込んで濡れる始末。トンネルなどで雨がしのげるありがたさを感じるという機会は自動車に乗っててなかなか体験できるものではないだろう。

 だが、便利で快適な車が普通になった今日、「走り」に特化したような車は逆に新鮮で生活にワクワクやアクセントを加えてくれる存在なのかもしれない。快感となる不便さは人間に楽しみを与えてくれるということだろうか……。

車検も自ら取得する

素人がスーパーセブンをユーザー車検、普通に落ちた。

 このレーシングカーとも呼べるクルマを実際に公道で走行させるには、当然車検に合格しなければならない。業者等に依頼して取得してもらう方法が一般的だが、今回このチャンネルでは自ら車検を受けに行く「ユーザー車検」に挑戦している。ユーザー車検を選択した理由は、Twitterにて「お金がないからではなく、他人に触られたくないから自分でやった」と説明している。

 有休を使って受けに来た当日、何としても合格を狙う動画投稿者。ジャッキアップしサスペンションのバネを伸ばし車高を稼ぐ作業からスタート。次にエンジンのキャブレターの調整。キャブレターとは燃料と空気を混ぜた混合気をエンジンに供給する機械式装置である。その中でもミスクチャ―スクリューと呼ばれる燃料の濃さを調節する部品を調整し排ガス対策を行っている。続いてシンクロメーターを使ってキャブレターの同調確認。これはキャブレターの空気吸入側にシンクロメーターをセットすることで、吸入空気量を測定し、キャブレターの同期調整を行い、安定したエンジン動作を保つ作業である。

 そして準備が整い検査開始。ライト系統、ホーンなどの検査を行っていく。DIYで部品も作っていることもありドキドキしながら検査を受けていく。順調に進むと思いきや途中でナンバープレート灯がつかずアウトとなってしまった……。

 その後、地上からの高さの検査。ここで心配になっているのがクラッチを覆うベルハウジングと呼ばれるパーツの下にあるフレームから地上までの距離である。下をのぞき込む検査スタッフ。やはり怪しいとの判定を受け詳しく検査することに。その後はレーンに入っての検査。チャンネルの視聴者さんにも助けられながら進めていく。サイドスリップと呼ばれるステアリングをまっすぐに保った状態で直進したとき、どれだけ横にずれるかを示す値を検査する項目へ、ここはクリア。

 その後光軸というライトの照らす方向を検査する項目にてまたもやアウト。夜間走行時などで確かに重要な点だ。

 その後も慣れないながらも検査レーンを進んでいく。わからないときに視聴者が教えてくれるのがとても救いになっている。排ガス検査はクリア! キャブレターセッティングをした甲斐はあったようだ。

 その後戸惑いながらもなんとかレーンを抜け、問題の車高詳細検査へ。最後の希望として車を持ち上げバネを伸ばす。人力で持ち上げられるのは軽さを重視したこの車種だからこそだろう。結果は残念ながらやはりアウト。最終的には不合格となってしまったが、挑戦してみることに意味がある。その後に関しては、別動画にて車検に再挑戦する様子がアップされている。この不合格後の結果と詳細を是非チェックしてほしい。

スーパーセブンをユーザー車検、3回目でやっと合格。

 こうしてみるとユーザー車検には専門の知識が必要であり、よほど好きでないと大変な作業であることが垣間見える。だからこそお金を払い、業者に任せるという選択肢が一般的なのだろう。普段詳細を知ることがなかなかできない車検の様子が苦楽とともに収録されているからこそ人気の動画となっているのかもしれない。

 このチャンネルの投稿者は自転車で世界を旅するなど、「自分でやる」ことが好きだからこそ今回の車検も自ら進んでできたのだろう。自分で動くことで感動を味わえること・モノは人によって違うであろうが、確かに存在するのかもしれないと感じられる動画だった。

 ほかにもセブンの生活動画や海外自転車旅動画など様々な動画があるので「スーパーセブンみぞ」チャンネルを是非チェックしてほしい。

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