電子楽器が広げる音楽需要 誰でも楽しめる電子楽器を探る

電子楽器が広げる音楽需要

 2020年、新型コロナウイルスの影響で楽器市場は縮小してしまった 。ヤマハの楽器事業の売上高は2020年4~6月期に前年同期比28%減、7~9月期に同14%減、10~12月期に同7%減と2020年はマイナス続き。河合楽器製作所も2020年4~12月期の連結決算は、純利益が前年同期比67%減、売上高が12%減。店舗閉鎖や音楽教室を休講が響いた。ヴァイオリンや管楽器などアコースティック楽器は試奏が必須。高価かつ、一生の一台になるかもしれない。どれだけネットショッピングが一般化しても実店舗での購入を選ぶ人がほとんどだろう。楽器店が軒並み休業する中、シェアを伸ばすのは難しかった。一方、電子楽器はコロナ禍で売上が増加した。電子楽器であれば、「同じ楽器でもどれを選べば良いかわからない」という悩みがかなり軽減され、ネットショッピングとも相性がいい。中でも電子ピアノは売上が大きく上がったそう。巣ごもり需要にはまったといえる。

 一方、オーケストラや吹奏楽はコロナの影響で厳しい状況が続いている。年間に予定していた公演の半数以上が中止となり、数億円単位の収入を失った団体も珍しくない。中でも、世界の名だたる指揮者、ソリストと共演してきた新日本フィルオーケストラがクラウドファンディングを開始したことは大きな衝撃を与えた。オーケストラは、編成にもよるが、50人以上の大人数が舞台上に集まる上に、間隔は狭い。ソーシャルディスタンスを取ると奏者同士で息を合わせることが出来ず、演奏に弊害が出てしまうだろう。中でも管楽器はマスクをつけて演奏するのは不可能。集団で音楽を演奏する日はまだ遠いだろう。また、演奏する側だけでなく、コンサートにも支障が生じている。オーケストラやホールは感染防止対策を練り、一度もクラスターを起こしたことがない。ただ、オーケストラにかかわらず、イベント開催は難しい状況下。つい先日も毎夏長野県で開催されている音楽祭「セイジ・オザワ松本フェスティバル」の中止が発表された。演奏するにも聴くにも思い通りにできない。もちろん練習することも難しいだろう。そんな中、1人で楽しめ、家でもできる電子楽器はやはり扱いやすい。新たな楽器需要の拡大として電子楽器は今後も大きな役割を担っていくと考えられる。

 今年の夏も思い描いていた夏は過ごせなかった。海外旅行に行けるようになるのではないか、という淡い期待は緊急事態宣言によってあっさり打ち砕かれた。しかし、おうち時間にもまだまだ楽しめる余地はあるはず。レジャーはまた来年のお楽しみに、今年は音楽に打ち込んでみてはどうだろうか。

(トップ画像=インスタコード公式HPより)

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