短尺動画市場の開拓者、元VAZ社長・森泰輝から見た“TikTokの凄さ” 「GAFAに勝つことを目指し、本気でやっている」

元VAZ社長、森泰輝にインタビュー

“何者かになりたい人は、まず一回何かになってみる” 失敗することの重要性を説く


ーー本の中で「意識高い系(笑)」と表現されてますが、最近は「意識高い系」の感覚自体が若い世代の中で変わってきている感じがします。起業や学生団体の立ち上げなどには興味がない人にも、そのような方々が増えたような気がするのですが、森さんはどう思いますか。

森:僕が学生と話していて思うのは、偏りがあるとは思いつつ、いまだに大手志向の人がほとんどだということです。意外に僕らのころ(10年前)と変わってなくて、まだまだ一般的には大手企業に就職したい子が多数派です。安定しているのもありますが、周りの同級生に引け目を感じたくないということもあるようです。それを聞いて、「意識高くてもいいんだ」と思ってもらえる本にしたいと思いました。

 ゼロイチでいうと、僕らの学生団体もある意味どこかのコピーなんですよ(笑)。活動資金を集めるには、優秀な若手を集めたい企業から協賛をもらうことが重要ですし、そうなると既にあるやり方を参考にするというのは、何もやり方がわからない学生がまず手を出すところとして理にかなっていると思うので。

ーーそれをふまえると、今回の本は起業を目指す学生にも、就職する学生にも響く内容だなと思いました。

森:「自分らしく生きていい」と思うことって、日本だと環境的に難しいですよね。僕が起業すると親に伝えたとき、親戚がみんな集まってきてボロクソに言われましたから。ベンチャー企業に就職したいと言っても、同じようなことが起こります。親は子どもを想って真剣に苦しんでいて、子どももそれを見て葛藤してしまう。今はまだそういう世の中ですよね。

ーー国全体のしがらみですね。本の「どんなところであっても、まず社会に飛び出そう。頑張っていこう」というテーマは、どの学生にも普遍的に言えることですよね。

森:どんな人生も否定すべきじゃないと伝えたかったんです。

ーー30歳でこの本が書けるのはすごいことです。

森:ある種生き急いでるから、いろいろチャレンジできる環境にいけたんだと思います。「意識高い系」って「生き急いでいる」ということですよね。その焦りはそんなに間違ってなかったと改めて思いますし、むしろ焦っているくらいがちょうどいいのかもしれません。

ーー大学時代に思い悩んだりするのもまた成長ですが、そこから早く抜けて、先に社会に飛び込んでいろんな経験をしたからこそ、20代半ばで規模の大きいビジネスができたり、大きい失敗をしたけど立ち直るところまでこられていると。

森:無理ができる時期って体力的にもリミットがあると思うので、自分の立ち位置を早く見つけるのは重要だと思います。

ーー本にはいろんな人との出会いが書かれていますが、自分の人生にとって大事な人との出会い方、またそのご縁を大事にする秘訣ってありますか?

森:出会い方は、いろんなところに積極的に行ってみることですね。出会いに繋がるようなコミュニティーに関わりまくって、誘われたらあまり興味がなくても、なるべく行くようにしていました。

 縁を継続するには、すぐに仕事につなげようとしないで、数年単位で付き合い続けるために1年に1回は顔を合わせることですね。なんの用事もなく誘うのも気まずいので、誕生日を祝うために集まったりしています。そうすれば年に1回は近況報告ができますから、可能な限り多くの人に会うようにしています。

ーー出会った当初はまだ何者でもなかった人でも、時間の経過とともにお仕事につながる例もありますよね。

森:そういうことは人生においてたくさんあったので、いまの僕にとっても重要な考え方だなと思います。

ーーまた、この本では、“何者かになりたい人が多いなかで、まず一回何かになることから始める”という考え方(リーンスタートアップ方式)を提唱していて、すごく面白いと思いました。何かになってみて、早めに失敗することの重要さを説いているのが、いわゆる自己啓発書っぽくなくて新鮮で。

森:そういう内容で書いている本ってあまりないんですけど、自分の伝えたいことはこれだと思ったんです。適職を見つける方法はなくても、早く見つけて確立することはできると思いますし、こうやったら見つかるという正解はないのに、正解がわからなくて悩んでる人が多いと感じたんです。経験しないとそこにたどり着けないけれど、10〜20年経験してから「やっぱり違う」では遅すぎる。リーンスタートアップのいいところは、試して、なるべく早く学習して、次の選択に活かせることです。短いスパンで判断することで、正解まで高速で学習してやっていこうという考え方は、個人のキャリア形成にも応用できると思いました。

ーー起業も何回も失敗する前提で始めて、その中の1つが当たるという考え方ですが、やりたいことがあれば、やってみて失敗してまた違うところでやればいい。というのは、今だからこそ提唱していけることかもしれません。

森:今は企業が副業を認める流れですし、以前よりは社会的にも転職に寛容ですから、この考え方は重要ですね。起業家だけでなく、会社員にも通用すると思います。

ーーそれでは最後に、これからの10年間で目指すことを教えてください。

森:これまでに理解した自分の強みと弱みを武器にして、チームで補完し合って成長していきたいです。本に書いた通り、色んな方に迷惑をかけたり、失敗を繰り返したりして、色んなことをようやく理解した今だからこそ、チーム内での補完がかなりうまくいっているので。

■書籍情報
『「ダメな自分」でも武器になる コンビニバイトはクビでも年商14億企業をつくった男の人生戦略』(扶桑社)
著者名:森泰輝
判型:四六判
定価:1430円(本体1300円+税)
発売日:2021/03/23

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