にじさんじは、バラバラな個性による“青春の集合体”だーー『にじFes 2021』に感じたこと

『にじFes 2021』レポ

 一方、27日に開催された「にじさんじ JAPAN TOUR 2020 Shout in the Rainbow! 東京リベンジ公演」は、昨年札幌、福岡、難波、名古屋、東京、そして無観客公演に切り替えとなった難波の追加公演を予定していたにじさんじのZeppツアーの中で、コロナ禍の影響で唯一中止となってしまった、リゼ・ヘルエスタ、戌亥とこ、アンジュ・カトリーナ、笹木咲、ベルモンド・バンデラスによる3月5日の東京公演のリベンジ公演。冒頭、昨年の開催当日に出演するはずだった5人が集まって行なわれた配信「にじさんじツアー自宅組」の音声も挿入しながら2020年の思い出を振り返る映像がはじまると、年数を表わす数字が「2021」になり、ゲームを思わせる「CONTINUE」を選択してライブがスタートした。

 前日のスペシャルゲストも迎えたお祭り感とは異なり、この日印象的だったのは、気心の知れた仲ならではのゆるく和気あいあいとした空気。大会場でのライブでありつつも、普段の配信の延長線上にある楽しげな雰囲気が全編を覆っていた。中でも序盤に目を引いたのは、5人ならではの関係性を生かした選曲やパフォーマンス。デュエットなどを通してベルモンド・バンデラスを笹木咲やアンジュ・カトリーナが奪い合うようなお馴染みの茶番で観客を湧かせたり、リゼ・ヘルエスタがライバー活動2周年の際に発表したオリジナル曲「ハッピーエンドをはじめから」を披露したり、にじさんじ屈指の歌唱力で知られる戌亥とこによる「心做し」やベルモンド・バンデラスのダンディな歌声が際立つ「ホログラム」で聴かせたりとそれぞれに会場を盛り上げる。中でもアンジュ・カトリーナの「デリヘル呼んだら君が来た」は、思わず笑ってしまいつつも何故かエモく盛り上がれてしまう、にじさんじらしい瞬間だったのではないだろうか。

 後半はツアーの地獄企画として、同じにじさんじ所属のモイラがお題を出した即興劇に1年越しに挑戦。その後、笹木咲&リゼ・ヘルエスタによる“ひよこぱんつ”の2人で披露した「いーあるふぁんくらぶ」、リゼ・ヘルエスタと尊敬する先輩・月ノ美兎との繋がりを思わせる「プリコグ」、そして『SMASH The PAINT!!』に収録されていた笹木咲のオリジナル曲「煽動海獣ダイパンダ」などを披露。リゼ・ヘルエスタ、アンジュ・カトリーナ、戌亥とこによる同期組“さんばか”の3人による「じょいふる」「3倍!Sun Shine!カーニバル!」を経て、最後は前述の配信「にじさんじツアー自宅組」でも最後に歌われていた「Virtual to LIVE」を5人で歌ってステージを終えた。

 改めて振り返ると、同じイベント内のライブにもかかわらず、この前夜祭公演と東京リベンジ公演は雰囲気から内容まで大きく異なっている。それはオンラインのみで開催された他の企画に関しても同様で、それぞれに統一感があるようで特になく、けれども共通してワイワイ楽しそうな雰囲気は共有していることが、にじさんじの魅力の核にあるものなのだろう。その雰囲気は、にじさんじの代表曲のひとつ「Virtual to LIVE」を提供したkz(livetune)が3周年に際して提供した新曲「Wonder NeverLand」の歌詞にも〈今日もどこかを目指してく/違う歩幅で目指してる〉という言葉で表現されている。バラバラな個性が集まって、時につまずいたり転んだりしながらも日々を生きる青春の集合体のようなもの――。にじさんじの魅力はそんなところにあるんじゃないかと、改めて感じた2公演だった。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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