12時間におよぶ就活大型特番はなぜ生まれた? ABEMA&ワンキャリアの若手社員が語る“企業と就活生の課題”

ABEMAとワンキャリアが就活番組を作った理由

番組の最初には前田裕二氏のES添削企画も。内容はいかにして決まったか

ーー全体の企画はどのように進めていったんですか?

杉田:私たちの企画のアプローチ方法においては、既存の概念やあり方を打ち破ったり、一歩ずらしたり、新しいものにすることをすごく意識しています。企業説明会は「一方的に言葉を賜る場所」みたいな状態になっているわけですから、僕たちとしては、ファシリテーターをこちらで用意して、そのファシリテーターが場を回すことで、企業の人事の方には自分の言葉で話してもらい、ベールに包まれてしまっていた本音を引き出すことを意識しました。決まったことを淡々と言うよりも、自分たちの素顔を見せたり、本音を話すほうが企業の本質的なブランディングにつながるんじゃないかと思っていて。僕たちの実現したいことと企業のあるべき姿が合致するところを制作として企画に落とし込むようにしました。

ーー多田さんは番組制作のパートナーとしてどういう役割を担っていましたか?

多田:企業の出演パートでは、企業の招待設計・コンテンツ設計・学生への広報などワンキャリア側の責任者をしておりました。企業が伝えたい、かつ就活生が知りたい・知らないと思っているところをいかに伝えられるかを意識して制作側に入ってました。

杉田:制作において、今の就活生の現状だったり、気持ちだったり、3月1日になったらどういう気持ちが生まれるのかだとか、ワンキャリアさんと組むことでそういった学生さんの真意など、情報の連携が取れたのは非常に大きかったなと思います。

 その結果、企画のきめ細やかさを意識することにも繋がっていると思いますし、「ABEMA」だけで企画をしていたら、どこかしら方向音痴になってたと思うんですよ。専門的な視点を企画に取り入れるためにもワンキャリアさんと組めてすごくよかったなと思います。


多田:やっぱりスピード感が一緒なんですよ。企業の大小や性質によってスピード感が合わなかったりすることが往往にしてあるじゃないですか。今回はこちら側もこう進めたい、「ABEMA」さんもこう進めたい、という両方のスピードが合っているからこそ、スムーズに動けました。

杉田:「ABEMA」とワンキャリアさんって「既存の形を破って企画にしていく」というところがかなり似ていて。ワンキャリアさんでいえば、選考を通過したエントリーシートを公開するというキャンペーン。これまでになかった前代未聞の、既存のルールを破ったアプローチをしていたわけで。「ABEMA NEWSチャンネル」も同様に、緊急編成による注目会見の全編ノーカット生中継など、既存の型にとらわれない新しい配信を追求してきました。そういった点がお互いに似ていて、そうすると「これ面白いじゃん」と感じる部分やアイディアが合ってくるんですよね。

多田:多分グルーヴが合うのも、格差に対して「許せない」という気持ちが根底にあるからだと思います。報道も「格差を是正したい」という思いがあると思うのですが、就活も数えきれないくらい情報格差があって。企業が一方的に情報を発信して、地方の学生に届かないなど色々あるじゃないですか。この格差を是正するためにやっているというのが前提にあるので、その手段として面白いと思うような型破りなことをする、という考えが似てるんじゃないかと思います。

ーー12時間の企画を進めていく中で意識したことや、番組のメリハリをつくるためのペースチェンジとなる箇所などはありますか?

杉田:基本は「企業の説明会」がベースになっていますが、その中でメリハリをつくるという意味では「コンテンツ×強烈な個性を放つビジネス界のトップランナー」といった内容を番組の前、中、後で入れ込んでいます。あとは、番組の最後を飾るのが夜帯のニュース番組「ABEMA Prime」のスペシャルなんですけど、ここはこれまでとトーンが変わります。就活の綺麗な部分だけじゃなく、ズシンと重いテーマにしっかり向き合う。女性の就活について覆面の企業人事に本音を話してもらったり、あとは障害者の方の就活事情だったりとか。リアルな課題に目を向けて企画を作っています。

ーー番組の最初、ESの添削企画に前田裕二さんの起用がありますが、起用の経緯や番組において期待することをお伺いできますか?

杉田:起用の理由は、前田さんがとにかく就活生に人気ということに尽きます。番組の開幕を飾るには、前田さんにご出演いただいて華やかに始めたいというのが意図としてありました。また、特に前田さんが出演される冒頭のブロックでは、就活初心者に向けて基本の「き」を凝縮して放送したいと思っていて、「就活生のために本当に役立つことを発信したいんです!」というトーンを前田さんが作ってくれると思いました。

多田:前田さんが話してくれると、「前に進めそう」という気持ちになりますよね。手厳しいことを言っても、ポジティブに心に刺さる方だなと思いました。

メディアが責任を持って、就活生に伝えたいことは「考える力」

ーー意地悪なことをいうと、いまはインフルエンサーや社会的に影響力を持っている人の大きな声に左右されやすい時代だと思うんです。お二人はそういった時代における会社のあり方や就活について、課題意識を持っていますか?


杉田:非常にあります。「ノブレス・オブリージュ(編註:高貴たるものの義務。身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観)」という言葉があるように、社会的影響力の高いメディアやインフルエンサーには、すごく責任があると思うので、発信には注意しています。

 例えば、自己啓発本を持ち出して「これを読んで今すぐやってください」と断定的に発信したことで、「やってみました。1000万借金抱えました」みたいな人が出てくる時代になってしまっているわけです。誰でもSNSをやっている社会になったからこそ、情報の受け取り手のリテラシーが育っていない時代でもあるので、インフルエンサーさんたちに出演してもらう際も、公共性や公益性をどう担保できるかを強く意識したいです。

多田:共感しかないですね。就活生に限った話をすると、そういったインフルエンサーの方々や企業の人事が全員“神”に見えているんです。だから、その方が無意識に言った言葉がずっと心に残ってしまうこともある。そのことを半年間費やして考えた結果、何も生まれないっていう状況がでてきてしまうんですよ。一企業の社会人が背景もないままフィードバックして、それがずっと心に残って、就職活動の半年間を無駄にするって、結構痛手じゃないですか。だからこそ、出演する企業が伝えることやゲストが伝えることには、細心の注意を払って発言してもらえるように、台本なども設計していかないといけないと思います。

ーー影響力の大きいゲストが出てくるうえで、そういった問題意識を持って作られているということにすごく安心しました。

多田:番組では「いろんな意見があるよ」と知ってもらうのが前提として大事なのかなと思っています。この意見が全部正しい、ではなく、いろんな考え方や意見を持ってる方が出演するというのが「ABEMA」さんの番組の強みじゃないですか。だから「こんな意見もあるし、こんな批判もある」といった様子が伝わればいいかなと思います。

ーー何が正しいかを考えて判断していくこと自体を啓発していくということですね。多様な意見を伝えるなら12時間くらいないと足りない、というのがよく理解できました。

杉田:そうなんです。単純に12時間の特番をやりますと言うと構えてしまいがちですが、ここまでお話しした考え方をもって番組を作っているということを知っていただいたうえで、それぞれの立場や意見と照らし合わせながら見ていただけると嬉しいです。

■『どうする?withコロナの就活&働き方【12時間特番】』概要
放送日時 : 2021年3月1日(月) 正午~24時(予定)
放送チャンネル:  ABEMA NEWSチャンネル
放送URL: https://abema.tv/channels/abema-news/slots/EyqYY2jbP7y4hd

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