オードリー春日&ドランク塚地のYouTube撤退で考える、“キャラクターなりきり”チャンネルの難しさ

 キングコングの梶原雄太も、かつて『はねるのトびら』のコントで自身が演じたキャラ“カジサック”に扮するという意味で、別の人物になりきっているYouTuberと見ることもできる。

 しかし梶原は、2018年10月1日に投稿された1本目の動画から「別でキングコング梶原というものをやらせていただいている」と、あくまで梶原とカジサックが同一人物設定であることをアピール。そのうえで、「2019年年末までに登録者数100万人を突破しなかったら芸人を引退したいと思います」と宣言した。芸人引退……つまり、芸人・梶原としてのコミットをチャンネルの趣旨に盛り込むことで、視聴者に「カジサックチャンネルとはキンコン梶原のストーリーなのだ」と強く認識させたのだ。

 加えて、「カジサック=梶原」であることのメリットは、初期の頃に多く投稿された芸人との対談動画で活かされた。対談相手からすると、頭に白いタオルを巻き、赤ジャージに身を包んでいたとしてもあくまで中身は梶原なので、思い出話や共通の知り合いの話などができ、トークに広がりを持たせられた。

 一方、グラリオサ音子チャンネルに梶原(カジサック)がゲスト出演した時があったのだが、「グラリオサ音子=塚地」ではないため、どのように話を進めて良いものか、2人共に戸惑う場面が多々あった。その結果、グラリオサがほとんど一方的に梶原に話を聞くという、かなり窮屈な対談となってしまった。『はねトび』メンバーとして積もる話もあったはずなのに、別人設定によって共有するエピソードで盛り上がりにくいというのは、もったいないことこのうえない。

 仮にYouTubeで自分以外の別人になりきるのであれば、ロバート・秋山竜次のように映像作品形式にするか、雨上がり決死隊・宮迫博之が『ワンナイR&R』のキャラ「轟さん」で生配信をしたように、スポット的に憑依させるのが好ましいのではだろうか。いずれにしても、「なりきり」はオプションで使うべきであって、YouTubeチャンネルの主体としてはデメリットのほうが多いように思われる。

 今回、YouTubeチャンネルとしていばらの道を歩んだ末に、残念ながら終わってしまった古井ひでおチャンネルとグラリオサ音子チャンネルだが、いつの日かそのリベンジとして、春日俊彰、塚地武雅として心機一転チャンネルを開設してくれることを願ってやまない。

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