終末の3日間に生きる人々を描くーー『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面』が名作である理由

 さらに本作を高難度たらしめているのが先述した「3日間システム」だ。このシステムでは、「時の歌」を演奏して3日間をリセットするとダンジョンの攻略までリセットされてしまうのである。しかも、じつは3日間をリセットしたタイミングでしかセーブができないという欠点もある。そのため、プレイヤーは72分以内にダンジョンの攻略を目指さなければならず、もしも間に合わなければまた一からダンジョンに挑む必要があるのだ。救済処置として、時間経過を遅くする「時の逆さ歌」が用意されているが、これは通常のプレイでは存在にすら気付けない裏技的要素だ。

 このようにNINTENDO64版『ムジュラの仮面』は不親切な要素が多く、賛否が分かれる作品でもあった。2015年にリリースされたリメイク版『ゼルダの伝説 ムジュラの仮面 3D』ではセーブの仕様など一部改善されたが、却って難易度が上昇したボス戦などもあるようだ。


 その他にも、ゼルダらしからぬオリエンタルで不気味な雰囲気や子どもでは理解しがたいような演出など『ムジュラの仮面』には人を選ぶ要素が盛り沢山だ。しかし、ダンジョンの攻略やサブイベント、各種アイテムの収集などボリューム満点で長く楽しめるゲームでもある。サブイベントのシナリオも秀逸で、とりわけ「アンジュさん」関連のイベントは多くの人におすすめしたい内容だ。

 『ムジュラの仮面』は決して手放しにおすすめできるタイトルではないが、普通のゲームに少し飽きてしまったという人にはぜひ一度プレイしてみてほしい。

■坂田憲亮
愛知県の田舎で自由気ままに暮らすフリーライター。アプリやゲームなどエンタメ分野をはじめ、国内大手の各種メディアにて記事を執筆中。取材から撮影、Webデザインまで行う自称・マルチクリエイター。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる