考古学研究はAIの台頭で前進、それとも後退する?

考古学研究はAIの台頭でどうなる?

 中東エリアに限った話ではないが、古代の歴史に関しては残っている状況証拠が少ないがゆえに、謎に包まれている。今回アッシリア語の復元に関与したアリエル大学のシャイ・ゴルディン研究員は、「アッシリア語を復元可能なAIを開発することで、歴史研究者によるアッカド語の入力機会が増え、その結果研究論文が引用されやすい環境が生み出されるだろう」と主張。確かに、古代ペルシャ帝国に関わる研究が活発になれば、歴史の新たな発見へと繋がり、さらにそこから新たなエンタメが生まれる可能性は決してゼロではないだろう。

 古代言語をめぐる事情に関しては日本においても同様だ。縄文時代の言語資料がほとんどないがゆえに、縄文語について知る由もないのが現状である。縄文語は弥生時代の言葉に駆逐されてしまったという説も囁かれているが、その一方で遺跡などに残った縄文人の人骨のDNA解析を通じて当時話されていた言葉を探るプロジェクトも進行している。どのようにして古代の言語を探るのか、そこにAIが介在するかどうかに関する詳細は不明である。

 これまでのところ歴史的事実として明らかになっていることは氷山の一角に過ぎない。AIの進化をきっかけに新たな歴史の1ページが開かれ、世界は前進するかもしれない。インドのIT系オピニオンサイト「Analytics Insight」がCENIEHの研究を引用しながら指摘するように、AIは決して消えることのない存在であり、AIをきっかけに世界が前進することもあれば、逆に後退することもあり得る。考古学や人類学、歴史学に限らず、各分野でAI活用に関する議論がなされているが、AIの導入へと踏み切る前に、その点をよく念頭に置く必要があると言える。

(画像=Pexelsより)

■大澤法子
翻訳者、ライター。AI、eスポーツ、シビックテックを中心に動向を追っている。

〈Source〉
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0237528
https://www.analyticsinsight.net/reviewing-the-behaviour-of-neanderthals-using-ai-applications/
https://www.express.co.uk/news/science/1356738/archaeology-news-artificial-intelligence-cuneiform-tablets-babylonian-engine-evg

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