「写ルンです」はなぜ再び流行した? スマホ世代が写真に“一手間”をかける理由

「写ルンです」はなぜ再び流行した?

 今の若者はデジタルネイティブと呼ばれているが、そんな若者も“一手間”による感動体験を欲している。写真関連で言えば、プリクラがそれに当たるだろう。プリクラも400円払わなければいけない、ゲームセンターに足を運ばなければいけないなど、スマホでの撮影に比べて一手間とコストがかかる。しかし、プリクラでないと残せない思い出、特別感のある体験によって、高機能なカメラアプリがあっても廃れるのではなく、共存している。

 この「体験」の重要性はコロナ禍を通し、特に再確認されたのではないだろうか。最も流行したものは「zoom飲み会」ではないかと考えられるが、緊急事態宣言があけて飲み会を再開してみると、やはりリアルのコミュニケーションには敵わないと感じる。また、VRで海外を含めあらゆる所が再現されているが、実際に訪れてみないと分からないものはたくさんあるため、満足できない。このように時間と手間をかけて何かを体験することはいくらデジタルが主流になっても欠かせないことだ。

 また、「写ルンです」のもう一つの魅力は、日常をワンランク上のものに昇華できることではないだろうか。道路や看板など日常のなんてことない風景も、「写ルンです」を通せばどことなくエモーショナルで、特別なものとなる。だからこそ前述の白石麻衣のオフショット写真集のように自然体に特別感が加わることで、彼女感が生まれるのだろう。

 “彼女感”の最初のブームは2017年に「#彼女とデートなうに使っていいよ」というハッシュタグの流行だろう。中でも最もバズったのは高校の卒業式帰りにバスの中で撮影したという橋本環奈が投稿した1枚。この画像からあたかも彼女かのように見える写真の人気に火がついたと推測される。この彼女感ブームの中でさらに彼女感をアップさせるのが彼女×フィルムの組み合わせだったのだ。

 「写ルンです」のブームはアナログ文化の再興のように見えて、実はデジタルとの融合で起きたとも言える。撮った写真はスマホに画像を移し、インスタグラムにもアップできるため、やはり若者との相性は良い。コロナ禍で日常は当たり前ではなかったと実感した今、日常を特別にするためにも「写ルンです」を、自分の当たり前に加えてみたい。

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