いま猛烈に『メタルギアソリッド』を遊びたい……冒険小説『真夜中のデッド・リミット』復刊に寄せて

 加えていえば、『真夜中のデッド・リミット』にはFOXHOUNDのようにピーキーな能力を持った「中ボスの集団」は登場しない。というか、超常的な能力を持ったスーパー兵士のチーム、それもアメコミのヒーローチームというよりは、山田風太郎の書く忍者集団のようなFOXHOUNDの存在こそが、『メタルギアソリッド』をゲームたらしめているのではなかろうか。彼らがいることでステージクリア型のゲーム的な質感とその質感を裏切る展開が用意できたわけで、やはり『メタルギアソリッド』にとって重要だったのは新川洋司のデザインによってバキバキにキャラを立てられたFOXHOUNDだったように思う。

 こうして並べてみると、『メタルギアソリッド』と『真夜中のデッド・リミット』の最大の違いは、明確に一人の主人公を設定し、それに対して複数名の悪役をぶつけるという作品の骨格の部分であることがわかる。『真夜中のデッド・リミット』が影響したのは作品の肉の部分であり、同じような筋肉がついているから似ているように見えるけど、しかしやはり冒険小説の骨格とゲームの骨格は別物なのだ。そして、「ゲームとしての骨格」をしっかり組み立ててブレさせることなくゴールまで走りきれることは、小島秀夫の数ある強みの一つなのだろうと思う。

 20年以上昔のゲームではあるけれど、『真夜中のデッド・リミット』が復刊された今だからこそ猛烈にもう一度遊んでみたい。リマスター版とか出ないかな……無理だろうな……。

■しげる
ライター。岐阜県出身。プラモデル、ミリタリー、オモチャ、映画、アメコミ、鉄砲がたくさん出てくる小説などを愛好しています。

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