歌広場淳×ゲームクリエイターじゃんきち対談 アナログ推理ゲーム・マーダーミステリーが与えてくれる「日常からの解放」

『ランドルフ』の設計思想は“プレイできる映画”(じゃんきち)

――そのなかで、歌広場さんが「人生が変わった」とまで言われている、『ランドルフ・ローレンスの追憶』はどこが他と違うのか。ネタバレできないなかで難しいと思いますが、制作する上でのこだわりなど聞かせてください。

じゃんきち:私が最初にマーダーミステリーゲームを遊んだとき、そのパッケージ自体には大きな可能性を感じたのですが、実はシナリオにものすごく不満があったんです。それは、自分の力が及ばないところで、どうしてもクリアできない状況になってしまうことで。例えば、犯人役のプレイヤーがたまたま重要な情報を握り、それを秘匿することで、周りのプレイヤーがどう頑張っても真相にたどり着けなくなってしまうようなことがあって。『ランドルフ』では、そういう状況になってしまう要素を一つひとつ潰しています。

――プレイヤーが知恵を絞り、自分ごととして真剣にプレイすれば、真実にたどり着くことができると。

歌広場:本来、プレイヤーたちがどんなに知恵を絞っても、ゴールにたどり着けないゲームの方がおかしいんですよね。

じゃんきち:私もそう思います。

歌広場:そして、一般的なマーダーミステリーだと、「どうにもならない」ことが時おり起きてしまうんです。自由度が保証されていて、ランダム性があるものだから仕方がない面もあるけれど、実生活でも、他人に人生を握られていると思ったら、めちゃくちゃ腹が立つじゃないですか(笑)。ネタバレになるので詳しく言えないのが苦しいのですが、『ランドルフ』にはそう感じさせられるところがまったくなくて、だから「自分がとる行動」に真剣になるし、没入感が圧倒的なんです。

じゃんきち:また、私は映画が好きなのですが、唯一不満に思ってしまうのは、再生ボタンを押したら、自分がそこにいなくても終わることなんです。なので、『ランドルフ』の設計思想としては、“プレイできる映画”というテーマもありました。

歌広場:本当に、自分が映画の登場人物になったような気分でしたね。僕の好きな言葉に「作家は感情移入で人を殺す」というものがあるのですが、いい舞台を観ていると、登場人物と同じように絶望したり、天にものぼる気持ちになったりするんです。その意味で、じゃんきちさんは「人が殺せる」作家なんですよ。

じゃんきち:これは私のシナリオがというわけではなく、マーダーミステリーというパッケージの素晴らしいところなのですが、普通、映画や舞台を観ていて、登場人物の気持ちを想像することはできるのですが、その役になって行動することはできないじゃないですか。マーダーミステリーはそれができるので、他のコンテンツに比べて感情移入しやすくて、他の人生が体験できてしまうんです。

歌広場:あとは、通常のマーダーミステリーには、けっこうキャラクターごとに決まったセリフを読み上げるシーンがあって、そこに照れがある人がいると没入感が削がれたり、楽しめなかったりすることがあって、プレイヤー側の「楽しもう」という姿勢が重要だったりするんですが、『ランドルフ』はほとんど用意されたセリフがないことも含めて、否応なく巻き込まれて、消極的な姿勢であっても楽しまされてしまう力があると思いました。

 これは、ゴールデンボンバーが目指してきたことにも通じるんですよね。多くのアーティストが出演するフェスなどに出ると、僕らに興味を持たないお客さんもいるわけです。それでも、絶対に振り向かせて、否応なく楽しませる。そういう思いでパフォーマンスをしているので、『ランドルフ』にも同じものを感じるというか。ベタ褒めするしかないです(笑)。

じゃんきち:ありがとうございます。音楽のライブと同じように、プレイヤーの皆さんにはお金を払って参加していただいているわけですし、100人中100人は難しくても、一人でも多くの人に楽しんでいただけるように、ということは大事にしているところです。

「自分の人生の影から逃避できる」(歌広場淳)

――ちなみに、マーダーミステリーを初めてプレイする人は、仲間を集めて遊ぶのがいいのか、それとも、飛び入りでまったく知らない人たちと遊ぶのがいいのか、オススメはどちらでしょうか?

じゃんきち:初対面の人と遊んでも平気な人と、そうではない人がいると思いますが、最初はわからないので、飛び入りできるお店や公演を調べて遊んでみてもいいと思います。仲間となら気楽ですが、そのなかで「役」を演じることに羞恥心を感じてしまうと楽しみづらいこともありますし、初対面の人とであれば、本当に「殺人の現場に偶然居合わせた人」としてプレイできるので、没入しやすいかもしれません。

歌広場:人狼ゲームと違って、マーダーミステリーは自己紹介ナシで、いきなり役として始めるシナリオもあるのがいいですよね。ネットでプレイするとき、自分自身について触れなくて済むので、二重の意味で“正体隠匿ゲーム”をしています(笑)。

じゃんきち:おもしろいですね。マーダーミステリーはそもそも、キャラクターに裏の姿があることが多いのですが、ゲームが終わったあとに、さらに隠していた素顔がある(笑)。

――「ゴールデンボンバー・歌広場淳であることを隠す」という別のミッションもこなしていると(笑)。マーダーミステリーは、別の人生を生きることで“日常”から解放されるものでもあるということですね。

歌広場:それが面白いところですね。必ずしも有名な人でなくても、自分の人生の影から逃避できるというか。その上で、特に『ランドルフ』は、終わった後に「一緒に別の人生を生きたこの人たちと、同窓会をやりたい!」と思うような作品です。

じゃんきち:実際にそういう方も多いですね。同じメンバーでそのまま何時間も飲みに行ったり、後日、感想戦のために集まったり。

歌広場:今後、絶対に“ランドルフ婚”があると思いますよ。

じゃんきち:真面目な話、『ランドルフ』でなくても、“マーダーミステリー婚”は絶対にあると思います。実際に“人狼婚”という言葉はあって、人狼ゲームでお互いの人間性をよく知った後だから、長続きすると言われているんですよ。ちなみに私も人狼婚です(笑)。

――それでは、初心者はどんなシナリオを遊ぶのがいいでしょうか?

人狼村の祝祭

じゃんきち:東京であれば、マーダーミステリー専門店「Rabbithole」で公演されているシナリオだったらハズレがないのでオススメです。

 パッケージを購入するなど、仲間内で遊ぶ場合は、「グループSNE」さんという会社が出している『人狼村の祝祭』というシナリオをオススメしたいですね。オンラインだったら、シャーロックホームズがテーマの『J・モリアーティの暗躍』も面白いですよ。

歌広場:僕はオンラインでプレイしたもので、『Brave Mystery~操られた姫~』や『興行師の号火』が面白かったです。

――ありがとうございます。最後に、歌広場さんから、“神クリエイター”のじゃんきちさんにメッセージがあれば。

歌広場:マーダーミステリーの新作はもちろん作っていただきたいのですが、僕は自分の想像を超えるものが出てくることがわかっているので、そういう意味では、何も希望はありません。じゃんきちさんを半ば教祖様のように捉えてしまっているので、適切な距離にするために、じゃんきちさんに対してどうマウントを取ろうか、と考えているところで。格闘ゲームをやろうぜ!、と(笑)。

じゃんきち:機会があれば(笑)。新作については、いいアイデアがたくさんあって、絶対に結末が想像できない、ワクワクするものが今後も提供できると思うので、ぜひ楽しみにしていてください。

■マーダーミステリー専門店「Rabbithole」(ラビットホール )
https://rabbithole.jp/
※『ランドルフ・ローレンスの追憶』のプレイが可能

■ゴールデンボンバー オフィシャルサイト
http://pc.goldenbomber.jp/

■ゴールデンボンバー全国縦断無観客ライブ「エアーツアー」3days
10/16(金)エアーツアー〜気持ちは北海道〜
10/17(土)エアーツアー〜気持ちは大阪〜
10/18(日)エアーツアー〜気持ちは沖縄〜
http://pc.goldenbomber.jp/contents/361346
※公演は無観客有料配信にて行います。詳細はHPをご覧ください。

■総合ゲームエンターテインメント集団「THE REBELS eMPIRE GAMING PROJECT」(通称:ReMG)
・公式HP
https://www.spaceshowertv.com/remg/
・ReMG公式YouTubeチャンネル内「歌広場淳 最強のエアー」
https://www.youtube.com/playlist?list=PL3v2t7qsnjWyG1SS9CNbrrSpT8Z4h5CWY

■歌広場淳 YouTubeチャンネル「戦う広場 ようつべ本店」
https://www.youtube.com/channel/UColgrSQJelFMuks_GjYfSxw

■TOKYO MX「格ゲー喫茶ハメじゅん」毎週金曜23:30〜24:00放送
・番組Twitter
https://twitter.com/hamejun_game
・番組YouTubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCeqsiUADFPnth5sL49D-Thw

■ニッポン放送「AKIのオールナイトニッポン0〜eスポーツSP〜」
毎月第1土曜 27:00〜28:30
歌広場淳がレギュラーコメンテーターとして出演中。
http://www.allnightnippon.com/aki/

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