「Unreal Engine5」はゲーム業界にどんな革新をもたらすか 驚くべき新機能について解説

「UE5」がゲーム業界にもたらす革新

リアルな光の描画を再現する“Lumen”

 UE5には、ライティングの手間を大幅に軽減する“Lumen”という機能も備わっている。Epic GamesはLumenについて「完全に動的なグローバルイルミネーション ソリューション」と紹介している。これだけではなんのことだかわからないかもしれないが、簡単にいえばゲーム内のシチュエーションに応じて現実に近しい光の反射を再現するというものだ。

 じつは、私たちが普段見ている世界をコンピュータの処理によって再現するのは難しい。人間の目に見えている世界は、脳によって補正されているからだ。たとえば、部屋の中から太陽が照り付ける外の景色を見た場合、本来であれば部屋が真っ暗に見えてしまうほど明るさに差がある。しかし、人間の脳はこれを上手く補正するため、屋外と屋内の景色の双方がはっきりと見えるのだ。

 これを3DCGで再現しようとした場合、太陽などのメイン光源とは別に間接ライティングを設置する必要があった。しかし、Lumenでは太陽角度の変化、洞窟の天井に空いた穴、懐中電灯の点灯といった状況に応じてこの間接ライティングが自動で変化するのである。たとえば、太陽を動かした場合には、太陽光が届かない場所の明るさも自動的に変化するということになる。この機能により、ライティングにかかる時間は劇的に軽減される。

Epic GamesとAppleとの確執

 本題からは逸れるが、UE5の開発元であるEpic Gamesといえば、Appleに対する抗議活動が話題だ。これは、Epic Gamesが運営するiOS版『Fortnite』において、App Storeを経由せずにゲーム内の通貨を購入できるシステムを実装したことに端を発する。これがガイドライン違反だとして、App StoreはEpic Gamesの開発者アカウントを停止する報復措置を執り、『Fortnite』だけでなくUnreal Engineそのものをブロック。Epic Gamesはこの措置を不服として訴訟を起こした。

 幸いにも、今回の裁判では、Unreal EngineのブロックはAppleとEpic Games以外にも大きな影響を与えるとして、開発者アカウントの停止は免れた。そのため、今後もUnreal Engineを使ってApp Store向けのアプリを制作することは可能だ。

 UE5には今回紹介したNaniteやLumenのほかにも素晴らしい機能がいくつも盛り込まれている。さらに、UE5は無料で公開され、ゲームからの収入が100万ドルに達するまではロイヤリティも免除される。そのため、技術と熱意さえあれば誰でも最新のゲームエンジンを使って開発を行うことが可能だ。UE5は紛れもなくゲームの可能性を広げる新時代のエンジンといえるだろう。UE5は2021年初頭にプレビュー版を公開し、同年後半にフルリリースを予定している。

■坂田憲亮
愛知県の田舎で自由気ままに暮らすフリーライター。アプリやゲームなどエンタメ分野をはじめ、国内大手の各種メディアにて記事を執筆中。取材から撮影、Webデザインまで行う自称・マルチクリエイター。

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