"ネットミームとして"次世代ゲーム機の話題独占 『Halo Infinite』が取り戻したい「魅力」を考える

『Halo Infinite』が取り戻したい「魅力」とは

ゲームプレイ映像に見る、『Halo Infinite』の「精神的リブート」の意味

 『Halo Infinite』は、そのパッケージアートやゲームプレイ映像のアートスタイルが示す通り、18年前に発売された『Halo: CE』を明確に意識した作品である。シリーズの初作となる同作は、荒削りではありながらも『Halo』シリーズの根源的な楽しさである「キャラクターと一体となって、手探りで進めていく探索」と「快適かつ、戦略性と自由度の高い撃ち合い」、「ゲームを進めていくにつれて明らかになる壮大な物語」という大きな3つの魅力が既に備わっていた。そして、今回のゲームプレイ映像からはその片鱗を感じ取ることができるのである。

 現時点で確認できる『Halo Infinite』における最大の変化は、ゲームシステムを旧来のステージクリア型から、不時着した惑星「ヘイロー」全体を自由に探索するオープンワールド型へと切り替えたことだろう。一見すると時流に合わせたようにも見受けられるが、元々、初期の『Halo』では広大なフィールドを手探りで探索していくという進め方が中心となっており、『Halo 4』以降でよりリニアな設計を強化していったという流れを踏まえると、今回のオープンワールド化はむしろ原点回帰であると言えるのではないだろうか。

 その導入部となる、「マスターチーフが誰かに起こされ、謎の惑星へと不時着する」という一連の流れも、人物や時系列は違えど完全に『Halo:CE』のオープニングを再現したものとなっている。オープンワールド化とこの導入部は、本作が「不時着してしまった謎の惑星を、右も左も分からない中で手探りで探索しながら、徐々に物語の全容が明らかになっていく」という『Halo:CE』と全く同じ軸を持つことを示している。近作で影を潜めていた探索要素を大きくフィーチャーし、ゲームの中心とすることで、『Halo:CE』にあったワクワクするような体験を取り戻そうとしているのだ。

 今回のゲームプレイ映像において最もフィーチャーされている戦闘については、まず、近作のメイン敵勢力のプロメシアンではなく、『Halo:CE』から登場しつつも前作で壊滅したはずのコヴナント軍が主要な敵勢力として復活したことが大きなトピックとして挙げられる。基本的なデザインは以前とほぼ変わらず、ビビッドな彩色のアーマーを身に纏っており、背景に溶け込むことなく、しっかりと視認できるようになっている。

 『Halo 4』以降の作品は、確かにグラフィックは素晴らしいのだが、敵が背景やレーザーの光などに埋もれてしまい、ひと目で戦況を把握することが困難になっているという問題があった。今回の映像では、色鮮やかで目立つコヴナント軍と、背景として割り切ったフラットなテクスチャのオブジェクトによって、視認性が大幅に向上していることが分かる。ネガティブなフィードバックの多かったグラフィックについては、クラシックなアートスタイルを意識しつつ、ゲームプレイの中核となる撃ち合いに注力するためのものであるとも考えられるのである。

 また、近作での戦闘はリニア化に伴い、限られた空間の中で敵を一掃するという場面が多く、敵の動きとゲームスピードの高速化もあって、とにかく銃を撃ちまくって解決するという流れになりがちで、特にゲームの後半では単調に感じてしまうことも少なくなかった。今回の映像では、ある程度広いフィールドの中で銃やオブジェクト、遮蔽物を活用しながら、戦況を乗り切るというシーンが多く映っており、更に新要素であるグラップリングフックなどの機動力を大幅に向上するアビリティも登場。Bungie時代の作品群では敵の配置を見ながら考え、戦略的に敵を倒していくという部分に強い魅力があったのだが、本作では更に自由度の高い戦闘を楽しめるのではないかと期待することができる。一方で、敵キャラクターの挙動についても、下っ端のグラントが格上のキャラクターに武器として放り投げられるなど、ユーモアに溢れたアップデートが施されていることが分かる。

 そして最後に物語について。「精神的リブート」と位置付けてはいるものの、本作は前作『Halo 5: Guardians』の続編であり、新たな悪役として登場する傭兵団「Banished」は外伝作品『Halo Wars 2』(2017年)で登場したキャラクターであるため、完全にリセットするのではなく、これまで描かれてきた物語を引き継いだ内容となっている。しかし、トレーラーとゲームプレイ映像から分かる通り、マスターチーフと同乗するパイロットは前作以降に何が起きたのかを知らない。本作を手に取るプレイヤーと同様に、ゲームを進めていくにつれて、何が起きたのか、これから何をすれば良いのかが分かるような構造になっているのである。開発元のインタビューでも、本作のストーリーは新規プレイヤーでも問題なく楽しめるように構築されていると語られているため、『Halo:CE』と同様に、徐々に物語の全体像が明らかになり、驚きを感じるような構造となっているのであろう。

 このように、一見するとチープなゲームプレイ映像かもしれないが、よく見ると、『Halo 4』以降にある課題を解決し、かつての魅力を取り戻すことで、改めて誰もが楽しめる『Halo』を作ろうとしていることが確認できるのである。

 本稿を書くにあたって改めて『Halo : CE』をプレイしてみたが、(古さを感じる瞬間も少なくはないものの)戦況を見ながら必死で考えて切り抜けていく戦闘や、右も左も分からない中で手探りで進めていく広大なフィールドの探索、偶然不時着した惑星『ヘイロー』の目的が徐々に明らかになる壮大な物語など、発売から18年が経った今でも色褪せない魅力があり、非常に楽しく遊ぶことができた。そして、近作において失いつつあるこれらの魅力の断片を『Halo Infinite』のゲームプレイ映像からは感じ取ることができる。

 確かに真新しい要素や、次世代機ならではと感じる場面は多くないかもしれないし、ゲームプレイ映像公開後に延期の決断に踏み切るという、開発元の迷いが見える動きも不安を加速させるが、それ以上に「根源的な『Halo』の楽しさ」と向き合うことを選択した本作の姿勢を筆者としては支持したいと思う。

■ノイ村
92年生まれ。普段は一般企業に務めつつ、主に海外のポップ/ダンスミュージックについてnoteやSNSで発信中。 シーン全体を俯瞰する視点などが評価され、2019年よりライターとしての活動を開始
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Twitter : @neu_mura

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