田中みな実の怪演はまだ終わらない! トリッキーな過去とその後描く『L 礼香の真実』で『M』ロスを乗り越えよう

『L 礼香の真実』4~7話レビュー

展開その1:新たなる刺客登場

 正幸(中尾暢樹)の成績トップを脅かす存在である真一(前原滉)を無事排除した礼香(中川梨花)に、新たなるライバルとして学年のマドンナ・ルイ(紺野彩夏)が現れる。「この汚らわしい手でマサのお弁当を作らないで」と礼香に詰め寄る彼女だが、ここでの礼香の出し抜き方が、小学生時代から変わらぬ“彼女らしい狂気”に満ちた手法となっている。

展開その2:罪の告白と愛の告白が同時に行われる

 礼香のこれまでの悪事を耳にした正幸に、音楽室に呼び出され、問いただされる。(確かに音楽室って放課後の呼び出しスポットだった)好きな人の前では塩らしく純粋な礼香。これまでの悪事を認め、「小学生の頃からずっと好きだった」と愛の告白。「勝手に好きになって、周りの人に迷惑かけてごめんなさい」と謝る姿は少し痛々しく悲哀が漂う。

 しかし、それも束の間、礼香はまたとんでもないことを口走る。「正幸くんにウザいと思われながら生きていくのは辛いから、私死ぬね」と正真正銘の“メンヘラ”っぷりを見せ、さらに「死んだ後に正幸くんにウザいと思われるのも嫌だから、一緒に死のう」と話は大きく飛躍する。この飛躍っぷりが彼女たる所以でもある。

 ここまではある意味、お決まりの展開の連続だと思うが、それだけでおわらないのが鈴木おさむ作品。この先に待ち受けるのは、皆が予想する斜め上をいく「さらなる狂気が狂気を超える瞬間」である。この衝撃はぜひ自身の目で目撃して欲しい。

 この思い出話を振り返りながら礼香(田中みな実)は言うのだ。「手に入ったと思った瞬間、魔法は解けた」と憑き物が落ちたように語る。トラウマにもなりかねない出来事を、「自分が好きになったマサとは、なんか違った」と言ってのけられる彼女は強く、たくましい。

 また自身の経験から「恋は手に入らないうちが一番楽しい」と悟ってしまっているのかもしれない。だからこそ、イケメンバーテンダー・茂樹(堀夏喜)が言う通り「情熱的」に好きな人を追いかけるが、それにはいつか終わりを迎えることをどこかで察知しながら、ならばどうせ燃え尽きてしまおうという夏の蝉のような切なさも伴う。

 礼香の高校生時代を演じた中川梨花は、アイドルグループに所属していた経験もあり、見た目は清楚で透き通るような透明さを持ち合わせ制服姿もブルマ姿も全く違和感がない。普段はクラスに馴染んでいる、好きな子には一途な「こんな子が……」というギャップがさらなる狂気を想起させ、視聴者に他人事だと思わせない説得力がある。異様に語尾を伸ばす口調や地団駄を踏む仕草、目を見開く様、不適な笑みなどは正に今の田中みな実演じる礼香の生き写しかのようだ。本作で最も注目を集めたこと間違いなしの圧倒的存在感だった。

 また、優等生の正幸を演じた中尾暢樹は、戦隊モノ以外にも映画『チア男子!!』で横浜流星とW主演を務めたことは記憶に新しい。この2人はドラマ『あなたの番です』(日本テレビ系)でも共演を果たしファンを沸かせた。さらに注目したいのが、本作で見せた二面性とも繋がる役どころとして、映画『殺さない彼と死なない彼女』のサイコキラーくん役でとんでもない深い闇を見せてくれている。

 『あなたの番です』繋がりで言えば、ガリ勉の真一を演じた前原滉は、マンションの新しい管理人役として登場していた。

 イケメンバーテンダー・茂樹を演じた堀夏喜はFANTASTICS from EXILE TRIBEのパフォーマーでドラマ初出演となった。初出演にして、田中みな実の怪演と間近で1対1で対峙するという大役をやり遂げた彼には拍手を送りたい。

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