BTSのオンライン動画が活発化 「早さ」と「定期配信」に重きを置いた強みを考察

2015年から現在まで続く長寿プログラム

 BTSはサービス開始の2015年から『福不福』『防弾歌謡』のようなバラエティ番組をV LIVEで独自に配信している。特に毎週30分のレギュラーバラエティ番組『Run!BTS』は、無料のウェブ配信で毎週コンスタントに世界中のファンが同時に楽しむことができるという点で、ファンとしては興味のモチベーションが持続しやすいという大きな利点があるだろう。世界的人気が拡大した2017年頃から多忙を極めているであろうBTSだが、2015年から現在まで続く長寿プログラムながら「ゆるバラエティ(時々大がかり)」という基本は5年間変わらないこの番組においては、昔から変わらないメンバーの姿を見られるという安心感もあるのではないだろうか。

 また、V LIVEは誰でも登録できるYouTubeとは異なり芸能人(アイドル)に特化したサービスのため、字幕がつくのがとても早い。ファンが字幕投稿できるシステムもあり、BTSの場合は作成済みプログラムには少なくとも韓国語・英語・日本語の字幕が予めついているし、生配信動画の場合もログが残されてから1週間もすれば10か国語以上の翻訳がついている。YouTubeよりもこのあたりの動きが早く、特にアルバムリリース後の個人配信では制作の裏話などが聴けたりもするため、BTSに限らず韓国アイドルの「オタ活」において、V LIVEが果たしている役割は大きいと言えるだろう。

 メンバーのJINによるモッパン(食事風景を見せる配信)『EAT JIN』のようにどちらのチャンネルにも上がるケースはあるものの、主に撮影済みの動画がYouTube、生配信コンテンツとファン向けバラエティがV LIVEという風に大体の棲み分けがあるBTSの動画配信だが、有料配信については近年リリースされた、BigHit関連の所属アーティスト専用SNS・Weverseの方に移行しつつある。V LIVEには加入者限定の動画や画像コンテンツが見られるアーティストごとの有料会員システムがあるが、BTSのV LIVE有料会員システムは今年終了している。

 それに伴い、以前V LIVEで有料配信していた『RUN!BTS』のビハインドや年一回の旅番組『BON VOYAGE』シリーズなどはWeverseでの配信に移行している。以前YouTubeプレミアムで配信されていたドキュメンタリー『BURN THE STAGE』も、続編とも言える『BREAK THE SILENCE』シリーズはWeverseでの有料配信だ。5月に無料配信された過去のコンサート無料配信はYouTubeのチャンネルで行われたが、6月に開催される有料配信コンサートもWeverse経由だ。よりニッチで「ガチのファン向け」である有料コンテンツに関しては、自社の配信システムでの管理へと移行しているようである。

 いち早いSNSの活用や、ウェブコンテンツが充実していることも、世界中にファンを拡大している一因とも言われるKPOP。特にその中でも「早さ」「定期配信」に重きを置いたBTSのやり方は「何を撮ってもコンテンツになる」というアイドル特有の強みにマッチしたやり方と言えるだろう。結果的に7年間で残った膨大な無料ウェブコンテンツは、ここ1〜2年でファンになった層にとっては、簡単に全てを消化しきれないほどのボリュームがある。

 「生配信コンテンツ」の導入により、本来なら人前に出る必要のなかった時間帯やシチュエーションまでもが配信されるようになり、オンとオフの線引きが難しくなったことで、演者側の負担は大きくなっているという問題はあるが、「掘っても掘っても終わりがない」というのはより没入して「ハマる」理由のひとつにもなり得るだろう。このようにして惹きつけたファンを最終的には有料コンテンツに誘導するというやり方は、直に触れることで得られるマネタイズが困難になっている現在の状況においては、事務所側にとっても、ひとつの理想形といえるのではないだろうか。

■DJ泡沫
ただの音楽好き。リアルDJではない。2014年から韓国の音楽やカルチャー関係の記事を紹介するブログを細々とやっています。
ブログ:「サンダーエイジ」
Twitter:@djutakata

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる