恋愛リアリティ番組の“誹謗中傷問題”にどう向き合うべきか 木村花さん逝去と『テラハ』制作中止を機に考える

 恋愛リアリティ番組は、出演者にとってはある種の「登竜門」的な役割を果たす。人気番組には駆け出しの俳優、ミュージシャン、モデルが参加し、その後大きく飛躍した者も少なくはない。木村花選手も、新住人インタビュー動画内で、参加理由をたずねられると、「女子プロレスを広めたいから」と笑顔で語っていた。

 そして当然ながら出演によってSNSのフォロワーも大きく伸びる。とくに人気番組である『TERRACE HOUSE』参加前と後では、フォロワーが数万人、いや十万人単位で増加するケースも見られた。それは出演者にとってプラスにもなることだが、その重圧を「個人」で受け止めることになる。

 彼女のSNSのフォロワーも、番組参加後みるみる増加。番組内で不器用ながらひたむきに恋をする姿は、話題の的にもなった。そして、その風向きが大きく変わったのは、他のメンバーが彼女の衣装を破損させてしまい、それを激しく詰問するエピソードが配信されてからだとされる。そのタイミングで、新型コロナウイルスで撮影が滞ったため、配信が止まったのも良くなかった。彼女のSNSには誹謗中傷が殺到した。

 事件の理由は当事者以外は知る由もない。ただ、くりかえすが、SNSに残された書き込みから、中傷が大きな負担になっていたことが伺えるのでは……という憶測しかできない。

 また、同じく『TERRACE HOUSE TOKYO 2019-2020』出演中の“社長”こと新野俊幸氏も、過剰なボディタッチや強引にキスを迫る様子から視聴者からSNS上で大きな批判を浴びており、中には批判のレベルを越えた、人格否定のような中傷も続いていた。

 そんな現状を止めるにはどうしたらいいのか。極論をいえば、ただ見ているだけの視聴者も含めて、全員加担していたかもしれない。そこに加えて、「番組や視聴者を批判している者」も、恋愛リアリティ番組の参加者として取り込まれてしまうのが、SNSの厄介なところだ。ただ、「全員悪い、反省しましょう」では、今後の問題解決の糸口にもならないと筆者は考える(当然ながら、具体的な中傷経験に心当たりのある者は、反省していただきたいし、度合いによっては法による然るべき対処が行われてほしい)。

 この件を受けて、にわかに「ネット中傷への法整備」の議論も盛り上がっている。

 筆者も十年くらい前にネット中傷で警察や弁護士へ相談に行った経験がある(自分ごとではないのだが)。しかしながらかなり悪質な中傷や個人情報がさらされていても、「表現の自由」を理由に、思うような結果を得ることができなかった。そして、当時の警察や弁護士のネット知識が曖昧だったことも印象に残っている(「学校裏サイト」すら知らないケースもあったのは流石に驚いたが)。

 当時の自分たちとしては納得いかなかったが、たしかに「表現の自由」や、「通信の秘密」は安易に手を加えてよいものではない。それに、これはあくまで体感的な話だが、十年前よりはネット中傷に強い弁護士も増えているように思うし、現行法で対応できるものも少なくないはずだ。この件から法整備をとなえる政治家の声もみられるが、国家検閲にも発展しかねないため、慎重な議論を重ねて欲しい。

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