「人の外見について攻撃する」を減らすためにーー整形アイドル轟ちゃんに聞く“時代の空気”との戦い方

轟ちゃんに聞く“時代”との戦い方

「整形手術のことを何も知らずに叩くのは待ってほしい」

――個人的に轟ちゃんのチャンネルを見るまで、個人的に整形ってあんなに痛々しいダウンタイムがあることを知らなかったので、すごく衝撃がありました。よく「整形して可愛い=ズルいこと」みたいな声を聞いたことがあったのですが、全然チートなんかじゃないって思って。

轟ちゃん:あれですよね、漫画とかでよくある包帯をシュルシュルシュル〜ってとったら「これが私?」ってめっちゃ可愛くなってるやつですよね。実際、あんなのないです(笑)。

――痛み、不安、そして金銭的なことも含めて、整形手術も努力の形なんだと気付かされた視聴者も多かったのでは?

轟ちゃん:鼻を整形したときの動画はリレー形式で十何日間とか出したんですが、だんだんコメント欄でも「頑張れ」みたいな声を多くいただきましたね。最終日には「おめでとう」「きれいになったね」みたいな感じで。応援してくれる方が日に日に増えていく感じでした。なかには、批判的な声もありましたが、想像以上に寄り添ってくださる方が多くて驚きました。最近の動画でも「メイクがうまくなったね」とか「ファッションも楽しんでてすごくよくなったね」とか、私自身の成長を喜んでくださる方コメントをたくさんいただいて。年齢関係なく母性にあふれている感じで、「あれ? お母さんかな?」みたいな(笑)。それは、やっぱりダウンタイムから見ていただいているからなのかなと思っています。

――あそこまで赤裸々に出そうと思ったのがすごい勇気だなと。単なるビフォーアフターにしなかったのは、何か想いがあったんですか?

轟ちゃん:「どうせ整形だろ」って叩いていた人たちに「この現実を見ろ!」っていう気持ちも少なからずありました。こんなに痛い思いをしてやってんだぞって。整形をしている人が叩かれる世の中がすごくキライだったので。でも、今思うと整形している人のなかには、苦しい姿を人に見せたくないって人もいたかもしれないですし、未だに私の選択が良かったのかはわかりませんが。ただ少なくとも、何も知らずに叩くのは待ってほしいという思いでした。それに優しい人ほど、聞けないですよね。「整形したの?」って。思いやる心がある人は静観するしかなくて、心無い人は叩いてばかり。そんな流れを変えられたらいいなと思ったんです。優しい人が聞きにくいと思っているところを発信することで、理解ある人が増えたらうれしいなと思いました。

「自分のことを許せる範囲って、だんだん広がっていく感じがします」

――動画を拝見していて、まぶたを幅広二重に手術してから、自然な奥二重に近い形に調整していたのがすごく印象的でした。あのときはどんな心境だったのでしょうか。

轟ちゃん:私の整形依存症とか醜形恐怖症って言われるような症状が、フッと軽くなった瞬間って、たぶんあのあたりだったと思うんですよね。今までは加えて加えて……って突き進んでいたんですけど、一歩戻ろうって思えたことが自分の中ではすごい進歩でした。コメントでは「幅広のほうが可愛かった」「奥二重は好きな顔じゃないから応援やめます」とか言われて、“うっ”となったりもしましたが、「じゃあ、いいよ」っていう気持ちになれたんですよ。「私の好きな顔が、あなたにとってキライな顔なら、それでいいよ」って。

――そう思えた何かきっかけはあったんですか?

轟ちゃん:特別な出来事があったわけではないんですが、ふと許せたんですよね。以前は鏡を見ては「自分ブス」「生きていけない」って思ってたんですが、なんとなく「もしかしたら幅広二重じゃなくてもいいのかも?」と感じて。今は整形前の自分の顔を見ても、「これはこれでかわいいじゃん」って思うようになってきたというか。以前はアゴが長いとか、鼻が低いとか、そういうところばかり見てたんですが、今は全体を見て「愛嬌のある顔とも言えるな」みたいな。視野が広がったというか、心が大人になったんでしょうね。いろんな意見があるんだって思えたら、自分のことを許せる範囲もだんだん広がっていく感じがします。

――自分自身を許すのが、一番むずかしい時期ありますからね。

轟ちゃん:そうなんです。本当に。 許し方も知らなかったですし、もとからそういう性格だしって思ってて。だから楽観的な人がすごく羨ましいときもありました。でも、今はそういうふうに見せているだけで、もしかしたらその人にも悩みがあるかもしれないなって考えられるようにもなって。一方向から見えているものだけで一喜一憂するのをやめると、結構視野が広がるなって。

――とはいえ、先ほども批判的なコメントがあったとおっしゃっていましたが、そういう言葉で傷ついたときにはどういう対応をしていますか?

轟ちゃん:「ブス」とか「キモい」とか、反射的に出る悪口のようなコメントには、もう傷つきませんが、理路整然と論文のような感じで「あなたは間違っている」みたいな人格否定系のコメントが付くと、やっぱり傷ついちゃいますよね。でも、反論することによっていろいろ失うのは私のほうなので。そういうときは、コメントの返信欄にグワーーーって思ったことを書き綴って完璧に論破するんです。で、全部消す(笑)。

――エア論破!

轟ちゃん:そうです。それを繰り返しているうちに、同じような批判コメントがきたときに「このパターンね」って、自分の中に防御する盾ができるんです。波風立てることが正義じゃない。でも自分の心が収まらない。っていうときには、オススメです。エア論破(笑)。それでも心のゲージはすり減っていくんですけどね。でも、そのすり減るゲージは抑えられるので。

――すごい! 轟ちゃんのエア論破本も読みたいですね(笑)。

轟ちゃん:『心の片付け方』本みたいな(笑)。でも、アンチの人ってちょっと見方を変えると、すごく参考になる意見だったりもしるんですよね。だから、一概に自分にとって「悪」とも言えなくて。アンチの人って、アラを探すためにいっぱい見てくれてるんですよ。「最初はすごく嫌いだったけど、ファンになりました」っていう人もいたりして。もちろんアンチ行為を擁護したりは絶対しないですけど、それでも即ブロックできる相手でもないと思っています。エア論破することで、自分の中のモヤモヤを言語化するきっかけをくれたとも言えますし。浴びた言葉に傷つくだけでなく、自分の中の肥料になるように消化させることを心がけています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる