『PSYCHO-PASS サイコパス 3』から考える「法とテクノロジーの関係」と「人間としての在り方」

『PSYCHO-PASS 3』にみる“法×テックの関係”

なぜドミネーターに引き金がついているのか

 しかし、テクノロジーによる支配が確立した社会においても、人間が人間らしさを捨てているわけでは決して無い。むしろ本シリーズの主要人物はどこまでも人間くさく、人としての尊厳と誇りをかけて行動する。そんな熱い人間ドラマこそ本シリーズの最大の魅力だ。

 どれだけシステムが発達しても、最後は人間の意思こそ大切なのだと本作は訴える。『FIRST INSPECTOR』に「ドミネーターには引き金がついている」というセリフが出てくる。シンプルだがとても重要な指摘だ。これだけ技術が発展した世界なら、人間が引き金を引くことなく犯罪者を捉えることも可能かもしれない。犯罪者を決めるのがシステムだったとしても、最後に引き金を引く決断をするのは人の意思なのだ。

 シリーズ1期の最終話でも、「法が人を守るんじゃない、人が法を守るんです。正しい生き方を探し求めてきた人々の想いの積み重ねが法なんです。条文でもシステムでもない、誰もが心の中に抱えている、脆くてかけがえのない想いです」というセリフが出てくる。条文の支配からテクノロジーの支配に移り変わっても、変わらない人間の想いがある。秩序体系が根本的に異なる世界だからこそ、変わらない人の想いが一層際立つ。テクノロジーの支配が全面化した世界において、どう人間として生きていくのか、それを見せてくれるのが『PSYCHO-PASS サイコパス』という物語なのだ。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』
全国公開中
Amazon Prime Videoにて編集版を独占配信中
声の出演:梶裕貴、中村悠一、櫻井孝宏、大塚明夫、諏訪部順一、名塚佳織、沢城みゆき、佐倉綾音、日高のり子、宮野真守、中博史、日笠陽子、森川智之、堀内賢雄、矢作紗友里、関智一、野島健児、東地宏樹、伊藤静、本田貴子、花澤香菜
監督:塩谷直義
シリーズ構成:冲方丁
脚本:深見真、冲方丁
キャラクター原案:天野明
キャラクターデザイン:恩田尚之
色彩設計:鈴木麻希子
美術監督:草森秀一
3Dディレクター:大矢和也、森本シグマ 
撮影監督:村井沙樹子
撮影視覚効果:荒井栄児
編集:村上義典
音楽:菅野祐悟
音響監督:岩浪美和
オープニング・テーマ:Who-ya Extended「Synthetic Sympathy」(SMEレコーズ)
アニメーション制作:Production I.G
配給:東宝映像事業部
(c)サイコパス製作委員会
公式サイト:https://psycho-pass.com/

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