アニメ『映像研には手を出すな!』に至る時代背景や環境変化 スティーブ・ジョブズがFlashを禁じた影響

アニメ『映像研』に至る時代背景や環境変化

制作ソフトは2016年からAnimateに 湯浅監督のスタジオ設立が早ければ……

「Adobe Animate 2020」。制作ソフトのFlashがAnimateに改称されてからは、『ゴノレゴ』が希望していた“原点回帰”が実現。作画機能も今まで以上に改善されただけでなく、今どきの2Dソフトでは標準の3DCGが応用された機能が搭載されるなど、大幅に強化された。もちろんHTML5にも対応している。

 結果的にアニメ業界は、閲覧環境のFlashの周辺とは異なる対応を見せていた。そうしたなかでアドビは2015年末、制作ソフトのFlashを「Animate」に改称すると発表し、2016年に実行した(そして翌2017年は、閲覧環境のFlashを2020年末に終了すると発表した)。

 『映像研には手を出すな!』を制作する湯浅政明監督のスタジオ・サイエンスSARUは、制作ソフトにAnimateを導入していることでも知られている。サイエンスSARUの設立は2013年だが、もし10年ほど早かったら状況が異なっていた可能性がある。

 なお2013年の10年ほど前といえば、湯浅監督が映画『マインド・ゲーム』を制作していた時期だった。どのみちジョブズが望む未来が訪れるにしても、さすがに湯浅監督であれば「Flashはデジタル作画でも使える!」と、当時の混乱を収拾できたかもしれない。

 本件は、改めて業界を超えて足並みを揃えることの難しさを感じさせた。ただ制作ソフトのFlashはジョブズの“お気持ち表明”をキッカケにAnimateへと改称され、HTML5を含めて大幅に機能が強化されたため、むしろ良い状況になったと言えるだろう。

■真狩祐志
東京国際アニメフェア2010シンポジウム「個人発アニメーションの15年史/相互越境による新たな視点」(企画)、「平成30年史 激変!アニメーション環境」(著述)など。

■作品情報
『映像研には手を出すな!』
(C)2020 大童澄瞳・小学館/「映像研」製作委員会

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