『VIRTUAFREAK』仕掛け人が語る、バーチャルタレントにとっての“場所”と“丁寧さ”の重要性

VTuberにおける“場所と丁寧さ”の重要性

「HMDの中で完結するのではなく、リアルなところに“場”が必要」

――同時に、飯寄さんは、VTuberのみなさんのリアルライブにもかかわっていますね。

飯寄:これも木戸さんとの繋がりがきっかけで、バルスが『SPWN(スポーン)』というVTuberのリアルイベントを実施していくサービスを立ち上げるタイミングでお誘いをいただいたんです。最初に担当したのが、そのSPWNのこけら落とし公演だったYuNiさんの『UNiON WAVE - 花は幻 -』で。当時、YUC’eさんがYuNiさんの「透明声彩」を制作していたり、アルバムに向けてヒゲドライバーさんも新曲を制作していたりと、YuNiさんの楽曲にかかわるこの2人にも出演してもらうという企画を提案しました。YuNiさんとYUC’eさんには楽曲制作の裏話を語るクロストークのコーナーも取り入れて、リアルとバーチャルのアーティストを混ぜたイベントにしたんですが……。

――お客さんの反応があまり良くなかったんですか?

飯寄:そんなことはないです。ただそのとき、「VTuberのファンの人たちは、まだリアルイベントに行ったことのない人も多いのかな」と思ったんです。というのも、最初にヒゲドライバーさんがDJをはじめたときに、「あれ、YuNiちゃんはまだなの?」とTwitterに投稿している人が結構いたんですよ。そこから、ライブやイベントに行く機会がなかった人もいるのなら、そのファンの人たちとも向き合ったイベントを企画しよう、と思ったのを覚えていて。僕自身VTuberを見始めた入口がいち視聴者だったので、仕事でかかわる際にも、視聴者目線であることを大切にしています。

――今でこそバーチャルタレントによるリアルライブは多数開催されていますが、確かに、その頃はまだお客さんもリアルライブに慣れていなかったのかもしれないですね。

飯寄:僕もそうですし、出演するVの方たちや、観に来てくれる方たちも、みんなで学びながらやっていく感覚で。もともと、セットリストやMCパートをどこに入れるかといったライブイベントの構成を考えるのは慣れていましたが、誰もがVTuberのリアルイベントを実施するという点では経験値がなかったので、何に気をつければいいのかも分かっていなかったと思います。それをひとつひとつ形にしていったのが2019年でした。バーチャルであってもリアルであっても、一度ライブイベントに来て「こんなもんか」と思われてしまうとクリエイティブの水準を下げてしまうので、「イベントってこんなに面白いんだ!」と感じてもらうために、ライブじゃないと体験できない企画を取り入れていきました。

 『UNiON WAVE - 花は幻 -』以降は、『TUBEOUT! Vol.2』(Alt!!、まりなす、銀河アリスが出演)やMonsterZ MATEの一周年ライブ『MonsterZ MATE 1st Anniversary Live~俺らがやらねば誰がやる~』、富士葵さんの『富士葵生誕祭令和元年』、ルキロキさんの『ルキロキお誕生日会2019~リアルだよ♡サスガー集合♥~』、東京・名古屋・大阪で同時開催したハニーストラップの『Honey Feast』などを担当したんですけど、技術的なことも理解したうえでイベント全体を構成しなければいけないという意味では、リアルアーティストよりも複雑で、普段のライブよりも気を張らないといけないことが多い、全く異なるものだと実感しました。

――出演者のみなさんのすごさを間近で感じることも多いんじゃないですか?

飯寄:それは本当に、めちゃくちゃ多いですよ。たとえば、ときのそらさんがとても印象的ですね。2018年12月に開催された『TUBEOUT! Vol.1』から何度かイベントに立ち会っていたこともあって、2019年10月に開催されたときのそら1stワンマン「Dream!」ではまだ1年も経っていないのにその成長ぶりというか、普段は絶対に無いんですが感動して本番中に泣きそうになりました(笑)。

 Vの方とかかわっていく中で、人として成長していく機会をみられることが本当にたくさんあります。そういった点では、ホロライブやKAMITSUBAKI STUDIOがアーティストとしっかりと向き合って上手くいってるのかな、と思います。一方で、「もっとこうすれば良くなるのに」と思うような可能性をもったアーティストもいます。これは、マネジメントとアーティストとの関係としてリアルでもよく言われていることで、僕としてはイベントやライブでいかにそのアーティストの魅力を最大限に引き出せれるか、というところにやりがいを感じている部分ですね。

――話を聞いていても感じるのですが、飯寄さんの場合は、バーチャルタレントのファンの方々や、そのカルチャーが集まる「場所」をつくることに魅力を感じている雰囲気ですね。

飯寄:そうですね。「場所」は、すごく大事だと思っています。2.5Dではインターネット配信という当時では珍しい技術で番組制作をしていたのに加えて、イベントスペースとしてもスタジオを運営していたんですけど、どんな技術を詰め込んでも人と人とのコミュニケーションが生まれないとコミュニティができなくて、その結果カルチャーは生まれない。もちろん今の時代ネットの中で補完できることもありますけど、やっぱり共通の趣味を持つ人たちがみんなで集まって、そこで知り合った人たちと好きなものについて語りあうのって必要なんですよ。HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の中で完結するのではなく、リアルなところにも「場」が必要だと思うんですよ。

――どちらか一つだけではなく、両方が必要だということですね。

飯寄:その通りです。VRライブはVRライブではないと、表現できないイベントの形がありますけど、たとえばVRライブの会場に集まった人たちがみんなで拍手のモーションをしていても、そこから「この後、好きなVの音楽について話そうよ」とはならない。もちろん、将来的に状況は変わっていくと思いますが、時代に寄り添って自分ができることをやっていきたいです。

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