バーチャルシンガーYuNi、初のリアルライブイベントで伝えた“歌にかける思い”

YuNi、初のリアルライブイベントレポ

 そしていよいよ、YuNiのライブがスタート。まずは「Winter Berry」でライブをはじめると、サビでは別衣装を着た2人のYuNiがバックダンサーを担当し、3種類の衣装のYuNiが息を合わせて歌い踊る演出で会場が一気に華やかになる。バージョンの異なる3つのMVを並べると動画が繋がる「Winter Berry」のMVとのリンクを感じさせる演出だ。

 続いて、カバー曲「太陽曰く燃えよカオス」では、「みんな立って!」「みんなで『うー!』『にゃー!』するぞー!」と伝えるとステージを広く使って観客を煽り、中盤には観客が「うー!」「にゃー!」と合いの手を決める一幕も。観客をバーチャル世界に引き込むのではなく、彼女が現実世界の観客のもとにやってくるARライブならではの雰囲気に会場の歓声がますます大きくなっていく。一方、彼女の歌声を多くのリスナーが知るきっかけとなったもうひとつのカバー曲「シャルル」では、歌そのものの魅力を伝えるようにステージ中央で歌い上げるなど、楽曲ごとのパフォーマンスの幅広さも印象的だった。続く今月配信開始したばかりの3曲目のオリジナル曲「花は幻」では冒頭に音源にはない雨音が挿入され、5.1chサラウンドの雨音が響く中、スクリーンには実写で撮影された花の映像を表示。ライブ用の振り付けを踊りながら、「Winter Berry」とは異なる切ないボーカルで観客を魅了した。

 そしてライブはラスト曲へ。YuNiが「最後の曲は新しい衣装で歌おうと思います!」と告げ、「変身!」と瞬時に真っ白な新衣装に着替えると、披露されたのは自身初のオリジナル曲「透明声彩」。この曲は2018年10月にリリースされるとiTunes Store総合チャート3位/エレクトロニック・チャート1位を獲得した代表曲のひとつであり、バーチャルシンガーとしてYouTube上に様々な「歌ってみた動画」を上げていた彼女が、初めて“自分だけの曲”を届けた記念すべき1曲だ。この日はライブだけの演出として背後に過去の動画の数々が表示され、過去の思い出や単独リアルライブに辿り着くまでの歴史を噛みしめるような雰囲気で、未来への希望や胸の高鳴りが歌われていく。最後は重大発表としてYUC’e、la la larks、ヒゲドライバー、kzの4人が手掛けたオリジナル曲6曲とカバー曲6曲を収録した1stアルバム『clear / CoLoR』を4月24日にリリースすることを発表。ヒゲドライバーとYUC’eをもう一度ステージに呼び込んでお互いや観客に感謝を伝え、イベントが終了した。

 この日のライブ中、YuNiがMCで「『YuNiが遠い存在になった』と言う人もいるけど、それは違うんですよ。むしろ、みんなに近づいているんだよ」と伝えていた通り、彼女が現実世界に飛び出して行なった初の単独リアルライブ『UNiON WAVE – 花は幻 – Supported by SPWN』で感じたのは、これまでも多くの人々を魅了してきた彼女の歌や、歌にかける思いが、よりストレートに伝わってくるような雰囲気。アルバム・リリースに加えて元号の変わり目をまたいでのVRライブも控える彼女のさらなる活躍に、ますます期待したい。

■杉山 仁
乙女座B型。07年より音楽ライターとして活動を始め、『Hard To Explain』~『CROSSBEAT』編集部を経て、現在はフリーランスのライター/編集者として活動中。2015年より、音楽サイト『CARELESS CRITIC』もはじめました。こちらもチェックしてもらえると嬉しいです。

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