『ブラックパンサー』IMAX上映の興行的成功が示唆する、“映画体験”の未来

VRは映画にどう影響を与えるか?

 そういった没入型の鑑賞スタイルが、今度は“VR”に移行しはじめている。ゲームを中心に注目を集めた“VR”を映画の世界に我先に導入をはじめたのこそ、IMAX社なのだ。それは“VR”というものが単なるアトラクション的なツールではなく、視覚と聴覚を前提にしたIMAXの流儀に当てはまるツールであるということの何よりの証明ではないだろうか。

 昨年IMAX社は、ロサンゼルスを皮切りに試験的にVRシアターを導入。『ジャスティス・リーグ』や『ジョン・ウィック』、『スター・ウォーズ』などのVRコンテンツを発表し実際に上映されている。2時間を超す通常の映画とは異なり10分程度の短い時間でその映画の世界を体現させる。今後このVRシアターが進歩を続ければ、映画がさらに身近なものとなることは間違いないだろう。

 余談としてIMAX作品ではないが、VRコンテンツが早くも映画界に認められた例を紹介したい。史上3人目となる2年連続アカデミー賞監督賞に輝いたメキシコの映画監督アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥが制作した6分半のVR作品『Carne y Arena』が、今年の第90回アカデミー賞で特別賞を受賞したのだ。

 移民と難民問題を扱う社会的なテーマをVR技術に落とし込んだアイデア性と、3年連続アカデミー賞受賞という偉業を成し遂げた撮影監督エマニュエル・ルベツキの巧みな映像表現が認められた同作。必然的にこの新進技術はブロックバスター映画だけのものではなく、映画全体の未来であることをアカデミー賞が宣言したといってもいいだろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『ブラックパンサー』
3月1日(木) 全国ロードショー 
監督:ライアン・クーグラー
製作:ケヴィン・ファイギ
出演:チャドウィック・ボーズマン、ルピタ・ニョンゴ、マイケ・B・ジョーダン、マーティン・フリーマン、アンディ・サーキス、フォレスト・ウィテカー
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
(c)Marvel Studios 2018
公式サイト:MARVEL-JAPAN.JP/blackpanther

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