長澤まさみ、デビューから変わらない活動の軸 「おもしろいものを作れたらそれでいい」

長澤まさみ、デビューから続く活動の“軸”

 矢口史靖監督の新作映画『ドールハウス』で主演を務めた長澤まさみ。これまでの彼女のキャリアの中で異色とも言える“ドールミステリー”で、娘を亡くした主人公・鈴木佳恵を演じている。終始“怖さ”が漂う緊張感の中、どこか“おかしみ”が存在する本作において、長澤は何を感じ、どう演じたのか。撮影現場でのエピソードや俳優としてのこれからについて語ってもらった。

「想像することで生まれるリアリティもある」

ーー長澤さんがこういうタイプの映画に出演するのは意外にも初めてですよね?

長澤まさみ(以下、長澤):はい、本当に初めてのタイプの映画でした。矢口監督が過去に怖い作品を手がけられていたことはファンの方の間では有名みたいだったのですが、私は正直知らなくて。なので、矢口監督が“ドールミステリー”を手がけると聞いて、「一体どんなふうになるんだろう」とすごく興味を惹かれたんです。実際に台本を読んでみると、もちろん怖い部分はありつつも、監督の持つコメディへの愛や人間の“おかしみ”がしっかりと感じられる物語で、「これは絶対におもしろい作品になる」と感じました。容赦のない展開も新鮮で、これはぜひやってみたいなと。

ーー冒頭からまさに佳恵に対して“容赦のない展開”が押し寄せてきます。長澤さんの“叫びのシーン”に一瞬にして惹き込まれたのですが、演じる立場としてはなかなか難しいシーンだったのではないでしょうか。

長澤:あのシーンは感情的に一番しんどい場面でした。それと同時に、映画の中でとても重要なシーンになるだろうなとも感じていました。こういうジャンルの作品の醍醐味って、説明がなくても状況が伝わって、観ている人がゾクゾクしたり、先の展開にワクワクしたりするところだと思うんです。その入口になるシーンでもあったので、丁寧に、かつ思いきって演じました。

ーー佳恵は娘を亡くした悲しみを背負いながら、人形の秘密に迫っていく役どころです。具体的にどのようなことを意識されて役に挑みましたか?

長澤:彼女がどんな人生を歩んできたのか、台本から自分なりに深掘りしながら想像しました。子どもを亡くした絶望から立ち上がり、また母になる喜びを得て、でも再び……という感情の波をどう捉えるか。人生の選択に翻弄されながら、自分を見失っていく姿をどう表現するかが大きな課題でした。でも、台本がしっかり描かれていたので、それを信じて臨みました。

ーー時間の経過も含めて、佳恵の心情の変化がとても自然に感じられました。

長澤:そこは監督やヘアメイクさん、美術さんなど、スタッフのみなさんと一緒に細かく調整しながら作っていきました。たとえば髪型ひとつでも印象が変わるので、些細な変化が人間の厚みを出すという感覚です。監督は現場で突然「今までにない表情でお願いします」など、サプライズ的な演出をしてくることもあって。そうした一つひとつの小さなことの積み重ねが、結果的に作品に深みを与えてくれたように思います。

ーー長澤さんは母親としての経験が実際にない中で、どうやって佳恵に感情を寄せていったのでしょう?

長澤:私自身は母ではありませんが、想像することはできます。女性として、あるいは人間として、生と死というテーマには常に向き合っていると思いますし、そこに共感する感覚は持ち合わせているつもりです。経験していないからといって共感できないわけではないし、むしろ想像することで生まれるリアリティもあると思っています。

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